三菱自動車の問題と失われた理念

 

 

 

 

 「Drive@earth」(ドライブ・アット・アース)

 

  

三菱自動車工業株式会社は、三菱グループに属する日本の自動車メーカーである。1970年(昭和45年)に、三菱重工業から独立した。グローバルブランドスローガンは「Drive@earth」(ドライブ・アット・アース)。

 

モータースポーツ事業に力を注ぎ、世界ラリー選手権 やダカール・ラリーに参戦し、「ランサー」や「パジェロ」により総合優勝をはじめとした好成績を多く残してきた。また、Jリーグ・浦和レッドダイヤモンズ(浦和レッズ)の親会社でもある。 2008年の販売台数は106万6000台で、内訳は北米11万9000台、欧州27万2000台、日本国内16万8000台、アジア・その他地域50万7000台。10年ぶりに過去最高益となった2013年3月期連結決算の売上高は1兆8151億円、営業利益は673億円、純利益は379億円でした。

 

三菱自動車は、三菱金曜会及び三菱広報委員会の会員企業です

 

2000年にはリコール隠しで、死傷者までだす事故が発生。消費者からの反発をまねきます。法人の存続もあやぶまれるなか、三菱グループのバックアップもあり、その後、会社は復活、13年には最高益を計上するまでに復活をしました。

 

しかし本年、四半世紀にわたり不正な燃費データ計測を続けてきたことが発覚。再び会社の存続の危機を迎えています。国土交通省だけでなく、米当局も追加試験を命じるなど追及の姿勢を強め、専門家は、過去のリコール隠しの際よりも深刻と指摘、全国にある三菱自の取引先企業6000社超、340万人を超える従業員も、連鎖倒産や廃業の危機に直面しています

 

この危機に日産自動車が増資の引き受けを承諾。事実上、日産の傘下の企業として再出発を図ることとなりました

「Drive@earth」(ドライブ・アット・アース)とは、グローバルブランドスローガンです。今回の不正で、地球をかけめくる三菱の自動車のほぼすべてが、規定の燃費に達していないことが判明しています。

リコール隠しから、燃費の不正。そして2度あることは3度ある・・・ 三菱自動車が抱える変わらない隠ぺい体質と、企業風土に幾ばくの不安を感じるのは僕だけでしょうか?

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■ 変えられなかった隠ぺい体質

 

三菱自動車が、燃費をよく見せかけるために不正操作を行い、データを改ざんしていたことを発表しました。しかも、不正は日産の指摘で判明したといいます。2000年に「リコール隠し」が発覚し、車両の欠陥による事故が相次いで4人が死傷。企業消滅の危機に襲われた三菱自動車でしたが、ようやく立ち直り始めていたさなか、社内にとんでもない地雷を隠していたのです。

 

いくらコンプライアンスだといって組織やルールをつくっても、それだけで企業文化や体質が変わるというものでもありません。

 

さらに、文化や体質は、そこに欠陥があるといっても、直接的に変えようとしても無駄だと感じます。研修や体質改善運動などから得られる成果は小さく、「喉もと過ぎれば元に戻る」世界です。

 

会社の文化や体質を変えるためには、業務が変わり、日々の仕事で新しい体験する、そこから学ぶということが絶対条件です。

死者まで出し、企業体質をかえる最初で最後のチャンスをもってしても、三菱自動車は膿(うみ)をだしきることができませんでした。せめて内部告発でもあればよかったものを、結局、今回も外部からの指摘でしぶしぶ認めたという構図は見え隠れしています

 

トヨタにみる企業風土

北米トヨタに採用されたワイズマンさんは、管理職の会議でトヨタの強さを体験することとなりました。会議での報告で、自分のチームの実績を誇らしげに語ったワイズマンさんでしたが、居合わせた役員は求めたものは意外な報告でした

「私たちは、あなたが素晴らしいマネージャーであることを知っています。だからこそ採用したのです。だからここでは、あなたが抱えている問題を教えてもらえませんか?そうすれば、ここにいる全員で力をあわせ、解決することができる」っと・・・

 

破竹の勢いで自動車業界を席巻するトヨタには、5W(5回のなぜ?)をもつという企業文化があるそうです。

工場勤務の従業員さんから、経営陣にいたるまで、日々「カイゼン」を意識することで、業務の効率化をはかり、結果1兆円をこえる利益をたたき出しています。

「カイゼン」とは、現状の問題点をさぐること、言い換えれば、失敗をみつけ成功の種を見つける作業です。

 

トヨタを支える「カイゼン」は、積極的に「失敗」と向き合う文化と、「失敗」を共有できる懐の深さを兼ね備えた風土が背景にあることがわかります。

三菱自動車の中に、トヨタに見られる風通しの良さ、あるいは、「失敗」を報告できる度量があったかどうか、大いに疑問を感じます

 

 

企業文化や体質を変えるのは難しい 

リコール隠しで露呈した企業文化や体質が変わっていなかった。だから、おそらく目のまえの業績なり取引をなんとかしたい、不都合な真実が発覚すれば、その責任を負いたくないといったことで不正操作が行われたのでしょう。  

 

社長の相川氏は、企業体質を変えられなかったかとのこと、質問に、「そういう見方があるのは重々承知している。(リコール隠しが発覚した)2000年以降、少しずつ、石垣を積み重ねるように改善をしてきたが、やはり、全社員にコンプライアンス意識を徹底することの難しさを私自身感じている。非常に無念でもあり、忸怩たる思いだ。」とのコメントを残しています。

 

ホームページで三菱自動車の「コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方」を見ましたが、いやはや血が通っていないというか、ハート感じられないというか、理念や哲学がまったく感じられないことがそれを象徴しているかのようです。

 

地獄への道は善意で出来ている

どんなひどい会社でも「会社を倒産させたい!と」いうマインドで働く従業員はいません。結果の多少はあっても、一人ひとりが自分の仕事とむきあっているはずです。でも、会社は結構な確率で倒産していきます。では何が会社に最悪の結果を招いてしまうのでしょう?

 

「地獄への道は善意で出来ている」との諺があります。よかれよかれ、っと選んだ選択しが、最悪の結果をもたらしてしまうことを諭した教訓です。

隠ぺい体質を払しょくできなかった三菱自動車は、「内向き」の論理という大企業病に侵されていました。

 

「内向きの論理」とは、お客様や得意先さまのことを考えず、社内のルールや、自分のポジションを気にして仕事をする考え方です。たとえば、燃費の問題では、長年にわたる不正を告発できませんでした。これは、告発することで、自分の上司や、部署の先輩、あるいは自分自身の出世に響くことだを直感的に察していたからだと分析できます。

 

三菱自動車のHPには、こんな理念が掲げられています

「大切なお客様と社会のために、走る歓びと確かな安心を、こだわりをもって、提供し続けます」

 

大企業病におかされた三菱自動車は、今回も、「お客様」や「社会」を大事にすることができなかったのです。そして、2度あることは3度あると、掲げられた理念とのギャップに、3度目、4度目の危機をも予想させてしまいます。

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■三菱自動車 綱領 (HPより)

 

大切なお客様と社会のために、走る歓びと確かな安心を、こだわりをもって、提供し続けます。 

 

大切なお客様と社会のために 

お客様第一主義に徹します

お客様からご満足いただくことを最優先に企業活動を行います。そのためには環境問題への対応や安全性の追求に全力を尽くし、お客様のご満足を通して社会から信頼される企業を目指します。

 

走る歓びと確かな安心を 

三菱自動車のクルマづくりの方向性を明確にします

三菱自動車がお客様に提供するクルマは“走る歓び”と“確かな安心”という2つの考え方を反映します。クルマ本来の魅力である走行性・走破性と、お客様にながく安心してお乗りいただける安全性・耐久性を両立したクルマづくりを行います。

 

・こだわりをもって 

三菱自動車らしいこだわりを大切にします

お客様にご満足していただけるようなクルマの新しい価値を見出し、お客様のカーライフをより豊かなものにするために、どんな小さなことでもこだわりを持って、クルマづくりに取り組んでまいります。

 

提供し続けます 

継続性を重視します

三菱自動車は信念と情熱を持って継続的な挑戦を行うことで、三菱自動車らしさを進化させたクルマをお客様に提供し続けます。

 

 

■絵にかいた餅は、企業を腐らせる

  

理念なき利益追求は会社を崩壊させる 

戦略とゴールがなければ、経営理念 (ミッション、ビジョン、バリュー)も絵に描いた餅になってしまいます。

しかし逆に、経営理念がなくて戦略やゴールだけだと、会社はどうなるのでしょうか。バブル期に不動産を買いあさった会社が山ほどありましたが、これはまさにゴールを目先の利益だけに設定した典型的な例です。こうした会社は、本来の自分たちのミッションを忘れ、ビジョンとバリューを見失い、メンバーの意識や考え方もバラバラになってしまいました。

 

戦略やゴールは、経営計画の実現のために必要となるものです。しかし、どんな状況に置かれても、戦略やゴールだけにとらわれてはいけません。経営理念なき戦略や目先の利益追求は、会社を内側から崩壊させてしまうのです。

 

 

目標や戦略のない経営計画は無力で、経営理念のなき経営計画は危険をもたらす

日本には、「船頭多くして船山のぼる」との格言があります。上司や役員の理念なき目標は、時に船を山に登らせるような暴挙をまねきます。

理念、ビジョンは「人を動かす」力を持っています。アメリカ合衆国のケネディ大統領は、10年以内に月に着陸し、安全に地球に帰還する「アポロ計画」を発表しました。するとNASAには世界中から優秀な科学者が集まり、本当にビジョンを実現させました。一方、宇宙開発をあらそったソビエトは、国ごとなくなってしまいました。これも目標にこだわり、理念、あるいは国民の幸福をおきざりにした1つの結果なのではないでしょうか?

 

 

  

 

 

 

 

 

 

  

■えんぴつから、ゼロ戦まで  ・・・すごすぎる三菱の組織力

 

総売上58兆円と世界最大の企業グループとなった三菱グループ。

リコール隠しの問題のあと、三菱自動車をささえたは、金曜会といわれる最強の親睦団体でした。2度目の危機をむかえた今、再び注目をあつめる三菱の歴史とグループの結束力について考えてみます。

 

 三菱の結束力を示す中枢ともいえる「金曜会」では、三菱グループの主要企業29社の会長・社長が一堂に会し、昼食を共にする。この会は「あくまで親睦目的であり、メンバー企業の経営に干渉したり、グループとしての政策や経営戦略を討議決定する場所ではない」(三菱グループ全体の広報活動を行なう三菱広報委員会)という。

 

 ただし、三菱の社名が付いた企業が経営危機となった場合は、金曜会主導で救済するといわれている。

 

「三菱ブランド死守」という動きが顕著に表われたのが「三菱自動車リコール隠し事件」だ。2000年7月、内部告発で組織的なリコール隠しが明らかとなった。経営危機に陥った三菱自動車を独ダイムラー・クライスラー(当時)が救済提携に乗り出した。

 

 ところが大型車のタイヤ脱落事故が起き2004年にトラック・バス部門のリコール隠しも明らかになりダイムラー・クライスラーが支援を打ち切ると通告してきた。

 

「近年の日本企業であれば、自動車事業を切り捨てていたと思います」(経済ジャーナリスト)

 

 不採算部門はリストラするのが21世紀型経営のセオリーだ。例えば日立は2009年3月期に7873億円の最終赤字を計上していたが、赤字部門だった薄型テレビ、ハードディスクドライブ、電力事業について撤退や売却、統合を進めた結果、2016年3月期では1729億円の黒字を計上するなどV字回復を果たしている。

 

 ところが三菱は決して「不採算会社」を切り離そうとしなかった。ここで動いたのが金曜会だ。前述の通り公式見解では「親睦目的」のはずだが、当時の世話人代表が会の中で異例の声明を発表したという。

 

「三菱グループに対する社会の見る目が厳しさを増している。各社におかれても三菱の信用維持、向上のため十分に心して頂きたい」

 

 ダイムラー・クライスラーが支援を打ち切った後は、三菱重工業、東京三菱銀行、三菱商事の「御三家」が金曜会メンバーの企業に支援を要請、御三家の増資を柱とする新再建策を公表し、グループ全体で三菱自動車を支えたのだ。当時、「この不祥事で三菱は終わった」と思った社員は少なくなかったという。

 

「しかし結果的にはグループの底力、有事における対応力を内外に示すこととなった。社員から“三菱であることを誇りに思った”という声が聞かれたのもこの頃です」(経済誌記者)

 

 雨降って地固まる。トップが示した「仲間は絶対に見捨てない」という精神が、結束力を強くしたことは間違いない。スリーダイヤを守ることが至上命題の三菱。それを物語るエピソードがある。

 

「三菱グループと全く資本関係のない三菱鉛筆も、三菱の名前があり、スリーダイヤのマークを持っています。御三家の幹部に冗談で『三菱鉛筆が経営危機に陥ったらどうしますか』と聞いたら、真顔で『助ける』というんです。三菱グループが危ないという風評が流れたら困る、グループでなくてもスリーダイヤは守る、というのです」(経済ジャーナリスト)

 

 現実にはそのようなことは起こらないかもしれないが、スリーダイヤの重みとそれを守るためのグループの結束力が窺える話だ。

 

※週刊ポスト2016年3月4日号より

 

 

■企業の風土

 

組織の三菱、人の三井、結束の住友

スーツ姿で外食にいき、ビールを頼んだ時、店員さんとこんなやりとりをした記憶はないでしょうか?

「ビールのご指定はございますか?」っと

あなたが好きなビールはなんですか?キレなら、アサヒ。コクなら、サッポロ。そして、三菱商事なら、キリン…っと

 

本来、ビールの好き嫌いは本人の嗜好です。しかし、店員さんの質問は、嗜好ではなく、「○○縛り」の有無を聞いているのではないでしょうか?大きな企業であると、社内の取引や関係で、キリン縛りや、アサヒ縛りになることが多々あります。 実は、この○○縛りこそ、企業の「風土」を現す一番の例なのではないでしょうか? 

 

ぶっちゃけ、飲み会のビールでどこの銘柄を飲もうが、売上への貢献は微々たるものです。

ただし、「○○縛り」を宣言することは、1つの儀式です。この儀式によって、自分の会社への帰属意識、そして会社自体のアイデンティティーを確かめる効果が期待できるです。 

 

風土や地域が消滅している現代にあって、財閥系といわれる企業。とくに三菱自動車の所属する三菱系のグループの結束力は大変強いといわれています。 個人と会社の関係を顕著に表す例が、旧財閥に根差すグループ企業で説明できます。

 

俗に、組織の三菱、人の三井、結束の住友との表現があります。三菱財閥は、GHQによる財閥解体後も、組織としての結束を高めるため金曜会といわれる社長同士のつながりを保ち、徹底した社員研修で、三菱の歴史、そして岩崎家の歴史を学んでいるそうです。

 

風土の原点は、グループの生い立ちにさかのぼります。三菱は明治初期に土佐藩が設立した海運会社の経営を岩崎弥太郎が引き受けたのが出発点。鉱業や造船業などに手を広げ、官営事業の払い下げで拡大した分野が多いのが特徴。4代目社長・岩崎小弥太は「われわれは、国から極めて重要な任務を任されているとも言える」と話した。これに対し、三井と住友は江戸時代初期の商店が起源。三井は「越後殿の酒屋」から「三井越後屋呉服店」(現在の三越)に。住友は書物と薬品の店が起源で、銅の鉱山経営や精錬、貿易も手がけていた。 

 

三者三様の個性をもつ財閥系の企業グループですが、この個性こそが多様性をうみ、日本を経済大国に押し上げた立役者でもあります。企業の寿命は、30年と言われる厳しい商環境のなかで、老舗といわれる企業の多くは、時代をこえた普遍的な価値観を、【社訓】という形で継承しています。

  

三菱、三井、住友に代表される企業グループは、お互いに切磋琢磨しながら、従業員さん、お客様、そして広く日本の豊かさをもたらしてきました。学校の授業では決して習わない企業の三国志こそが、私たちの生活をつくってきました。

 

三菱ほどのグループであっても、売上減や、社内の不正は起こってしまいます。問題は、問題がおこったときの危機管理であり、また、法人が立ち戻るべき「理念」に向き合えるか?という点ではないでしょうか?

 

 

■三菱の三綱領

 

「三綱領」は、1920年の三菱四代社長岩崎小彌太の訓諭をもとに、1934年に旧三菱商事の行動指針として制定されたものです。旧三菱商事は1947年に解散しましたが、三菱商事においてもこの三綱領は企業理念となり、その精神は役職員一人一人の心の中に息づいています。

  

所期奉公 

事業を通じ、物心共に豊かな社会の実現に努力すると同時に、かけがえのない地球環境の維持にも貢献する。

 

処事光明 

公明正大で品格のある行動を旨とし、活動の公開性、透明性を堅持する。

 

立業貿貿易

全世界的、宇宙的視野に立脚した事業展開を図る。