藤堂高虎 家訓

藤堂家 家訓

 

『寝屋を出るよりその日を死番と心得るべし。かように覚悟極まるゆえに物に動ずることなし。これ本意となすべし』

 

意訳)朝おきたら、今日が最期の日だとおもって生活しなさい

   ※同じ意味で、「出かける時は、新しいパンツをはけ」というものがあります^^

 

 

 

藤堂 高虎(とうどう たかとら

生誕:弘治2年1月6日(1556年2月16日)

死没:寛永7年10月5日(1630年11月9日)

 

戦国時代から江戸時代初期にかけての武将・大名。伊予今治藩主。後に伊勢津藩の初代藩主となる。藤堂家宗家初代。

 

何度も主君を変えた戦国武将として知られる。築城技術に長け、宇和島城・今治城・篠山城・津城・伊賀上野城・膳所城などを築城し黒田孝高、加藤清正とともに名人として知られる。

 

その後、高虎は徳川家の重臣として仕え、江戸城改築などにも功を挙げたため、慶長13年(1608年)に伊賀上野藩主・筒井定次の改易と伊勢津藩主・富田信高の伊予宇和島藩への転封で今治周辺の越智郡2万石を飛び地とし、伊賀一国、並びに伊勢8郡22万石に加増移封され、津藩主となる。家康は高虎の才と忠義を高く評価し、外様大名でありながら譜代大名格(別格譜代)として重用した。

 

慶長19年(1614年)からの大坂冬の陣では徳川方として参加する。翌年の大坂夏の陣でも徳川方として参戦している。この戦いでは長宗我部軍の猛攻にあって、一族の良勝や高刑をはじめ、600人余りの死傷者を出している。戦後、その功績により32万石に加増された。高虎はこの戦いの戦没者供養のため、南禅寺三門を造営し、釈迦三尊像及び十六羅漢像を造営・安置している。

 

一方で内政にも取り組み、上野城と津城の城下町建設と地方の農地開発、寺社復興に取り組み、藩政を確立させた。また、幕府の命令で陸奥会津藩と讃岐高松藩、肥後熊本藩の後見を務め、家臣を派遣して藩政を執り行った。寛永7年(1630年)10月5日に江戸の藤堂藩邸にて死去。享年75

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■主君を8度もかえた忠義もの?

 

画像は、高虎の甲冑です。

 

高虎は8度も主君を変えた苦労人のため人情に厚く、家臣を持つことに余り頓着せず、暇を願い出る者があるときは「明朝、茶を振る舞ってやろう」と言ってもてなして自分の刀を与え「行く先がもしも思わしくなければいつでも帰ってくるが良いぞ」と少しも意に介しなかった。そしてその者が新たな仕官先で失敗して帰参を願い出ると、元の所領を与えて帰参を許したという(江村専斎の『老人雑話』)

 

この高虎の行為に家臣が反発すると「臣僕を使うのに禄だけでは人は心服しない。禄をもらって当然と思っているからだ。人に情けを掛けねばいけない。そうすれば意気に感じて、命を捨てて恩に報いようとするものだ。情けをもって接しなければ、禄を無駄に捨てているようなものである」と述べたと伝わっています。

 

主君を8度も変えながらも、家康の信頼は厚く、高虎以上の忠義ものはいないと取り立てました。その信頼は、死の淵で唯一謁見を許された外様大名であったことからも分かります。

 

高虎は何人も主君を変えたことから、変節漢あるいは走狗といわれ、歴史小説などでは否定的に描かれる傾向が多いです。しかし、江戸時代に儒教の教えが武士に浸透する以前の日本では、家臣は主君を自ら選ぶのが当たり前であり、何度も主君を変えるのは不忠でなかったと言われています。

 

時代がかわり、幕末の時代。鳥羽・伏見の戦いでは、藤堂氏は、官軍を迎え撃ったが、幕府軍の劣勢を察し、官軍に寝返り、幕府側に砲撃を開始しています。そのため幕府軍側から「さすが藩祖の薫陶著しいことじゃ」と、藩祖高虎の処世に仮託して皮肉られたという。

だが一方、寝返った藤堂家でしたが、官軍の日光東照宮に対する攻撃命令は「藩祖が賜った大恩がある」として拒否しています。250年も前の忠義に生きながらも、一方では、時代をとらえドラスティックな選択をみせるしたたかさを感じます。

 

 

■藤堂家 家訓とは?

江戸時代を通じて津藩藤堂家の家臣は高虎のある遺訓を座右の銘としています。それは「寝屋を出るよりその日を死番と心得るべし。かように覚悟極まるゆえに物に動ずることなし。これ本意となすべし」である。

つまり高虎は毎日を今日こそが死ぬ日だとの覚悟を持って生きよと家臣に言い聞かせてきました。

 

 全文は200箇条もある家訓となっています。

築城の盟主として、江戸城の建築もまかされた高虎です。何百年ともつお城のように、家臣たちに多くの家訓を残すことで、藤堂家の行く末を見守ったのかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

剛の者が遺した細かすぎる家訓 

 

身の丈185cmを超えたという大男であった藤堂高虎。数々の合戦でも武勲をたてて、戦国を代表する「剛の者」として有名です。

一方、高虎が遺した家訓をみると、存外に細かい指摘が多く、繊細な性格だったことが分かります。高虎は城づくりの名人としても有名でした。城づくりには設計から施工まで高度な知識と見識が求められる作業です。

 

家訓は晩年に書かれたものですが、200箇条が江戸屋敷で口述筆記の終わったあと、さらに言い足りぬと見て、後日、4つ追加した。あまり、キリのいい数字とかにこだわることはなかったようです。結構、執拗な性格のように思えます(*_*)

 

 

※家訓ニスト史上最長となる「高山公遺訓(別名、藤堂高虎家訓200ヵ条)」は、長すぎるが故に、ネットでの紹介もありませんでした。

今回、「おおた葉一郎」さんのブログから引用させていただきます。

おおたさんは、東京都立図書館でコピーを入手するも原文だったため、伊賀上野城で売っているという現代語訳を何とか入手、ブログにアップされています。ご苦労さまでした・・・っていうか長い(*_*)

 

(参照:おおた葉一郎のショート・ショート・エッセー) 

http://blog.goo.ne.jp/ota416/e/7b7e77fbad024aadef97be31416119b7

  

 [可為士者常之覚悟之事]

サムライたるべき者、常の覚悟のこと

 

まず、武士の一般規定である。

 

第1条 寝屋を出るより其日を死番と可得心かやうに覚悟極る ゆへに物に動する事なし 是可為本意

 

寝室を出る時から、今日は死ぬ番だと心に決めること。そういう覚悟があれば、物に動じない。本来、こうあるべきだ。

 

第2条 常々諸事に心を附 嗜深き人ハ自然の時手にあへはされはこそ心かけ深き故士の本意をとけたるとのさたにあふ もし不仕合にて手にあはさる時も常に心かけ深き人なれとも不仕合 是非なくと取さたなり 善悪の時外聞をすゝく 是徳にあらすや

 

常に心配りをし、たしなみの深い人は、いざという戦功があれば、「さすがに心がけがいいから侍の本分を遂げた」と言われ、失敗したときも、「常に心がけのいい人であっても失敗したのは残念」とされる。良しにつけ悪しにつけ、聞こえがいい。是は人徳だ。

 

第3条 常に物毎由断に覚たる人ハ自然の時手にあひたるとも犬ののみたるへしといふ又手にあハきる時ハ常に心かけなき人なれは尤嘲をうくる是面目なき事なり 

常に油断だらけの人は、戦功があってもたまたまのことであると言われる。失敗したときはあざけりを受け、面目を失う。

  

第4条 出陣の時敗軍すると覚悟尤の事なり 勝軍の時ハ不入若負軍の時うろたへ間敷ためなり 

戦いの出陣の時には、負ける覚悟をしておくのは当然だ。勝ったときには不必要だが、負けたときにうろたえないためである。

 

第5条 目に立過る具足万武道具心得あり 

目立ち過ぎる、よろいかぶと。よろず武道具には心得がある。 

 

第6条 上帯ハ布但前にて結ふへし同下帯布仕立やう有 

上帯の布は前で、結ぶべし、同様に下帯にも仕立て方がある。

 

よろいかぶとを付けたことがないため、よくわからないが、紐は前で結べということなのだろう。下帯というのは一般にフンドシということなのだろうか?確かに、フンドシが戦闘中に緩むと、みじめな結果になるだろう。

 

第7条 刀脇指もの前にてすん袋可掛 

刀、脇差は前のほうで寸袋(刀の鞘を入れる皮袋)を掛けるべき

 

第8条 二重腹帯の事 

二重に腹帯をすること。

  

第9条 大きなる馬あし、

大きな馬に乗ってはいけない。

  

第10条 陣道具柿あし、紺可然色々ありといへ共書付におよはす 

戦いの道具で柿色はよくない。紺色がいい。色々あるが、書き付けるほどではない。

 

 

[家来常々召仕様之事 11条-20条]

 家来常々召使いようの事

 家来の使い方についての論考。中小企業の社長用という感がある。

 

第11条 第一惰をかけ諸事見のかし候事肝要也大それたる事有之時は其身の因果たるへし理非を以可申付然れ共助て不苦品あらは其儀にもとうし可然切ル手遅かれと申伝たり 

家来には情をかけ、諸事見逃してやることが肝要だ。大それたことがあった場合は自分の不運(因果)と思うしかない。理由をつけて申し伝えるべきである。助けてもよいというのであればよく考えてそのようにして、切るのは遅くてもいいと申し伝えている。

 

第12条 家人に禄をとらせたる分にてハ思ひつかす奉公する上下禄ハ相応に取へし是大鉢也とかく情にて召仕へは徳多し一言にて命を奉る是情なり禄多くとらするとも命をすつるほとの事ハ有ましきか深く情をかけむとおもふ主人ハ用にも可立歟第一本意たるへし

 

家来に給与を払うのに、ひいきをしてはいけない。奉公人の給与の多寡はそれ相応に行なうべきだ。とかく、情をもって召し使えば徳が多い。一言にて命を預けるのは情によるものであって、給料を多く払ったところで命を捨てる程のことはないだろう。深く情をかけようと思う主人は物の用にも立つだろう。これが本意の第一である。

  

第13条 人のささえ不可聞又横目ハわさハひのもとひ也たとへささへるもの有時ハささゆる人とささへらるる人と常の挨拶を開へし惣而何事も不聞様に常に仕置の分別無他

 

他人からの告げ口を聞くべからず。また、他人を監視することは災いの元である。例えば、告げ口する者がある場合でも、告げ口した人間とも、告げ口された人間ともいつも通り挨拶を受け、なにごともなかったようにふるまうべきだ。

 

第14条 召仕ものに能者あしき者有間数也其人々の得たる所を見立それぞれに召仕へは人に屑なきなり得ぬ事を申付るによりて埒あかす結句腹を立なり是主人の目かあかさる故なり

 

召し使うものに、能力のある者、能力の無い者はいない。それぞれの得意とするところを見立てれば人に屑はいない。できないことを申し付けて、埒があかなくなり、結局、腹を立てるのは、あるじに人を見る眼がないからだ。

 

第15条 家来たり共異見申者あらは委聞へし世間の取沙汰を聞言と心得へし能聞届手前にて了簡して至極の所は用ひまたそはつら成所は捨へし必主人により内の者の分として主人江異見立する推参といひ機嫌あしき是天下一の悪人たるなり家頼主の為にならぬ者ハ陰々にて指をさし他の家来に語り伝へ名を立ル者数人なり我も家来も非本意常に情深き主人ハ家来名を不立他の家来主人の作法尋れとも不語主人の心持肝要の事なり

 

家来であっても、異なる意見があれば、詳しく聞くべきだ。世間の評判を聞くようなものだ。良く聞き自分で考え、良いことは実行し、またそうではないことは実行しない。あるじによっては、内のものの分として主へ異見を申すのを、でしゃばり(推参者)として機嫌を悪くするものがある。これは、天下第一の悪人である。あるじのためにならないのは、陰で指をさし、他の家来に語るものである。このようなことは自分も家来も本意ではない。常に情け深いあるじは、家来の名を言わず、他の家来もあるじの作法を尋ねられても語らない。あるじの心の持ちようが肝要である。

  

第16条 士か士を仕ふ是時の仕合なり常々言葉きたなくいふへからす無成敗すへからす天道のかれかたし

 

武士が武士を使うというのは、時の成行きなので、常々言葉汚く言ってはいけない。しかし成敗しないのもいけない。天道は逃れがたい。

 

第17条 惣別人間たる者上下共心正敷して律義にして一言半句もうそを不可言人をうたかふへからす但時のはなし抔ハ偽ましりても苦しからさるハ是も人の害に成事いふへからす

 

すべて、人間は上下ともに心正しく律儀であって、一言半句もウソを言ってはならない。他人を疑うべからず。ただし、世間話などはウソが交じってもいいとは思うが、他人の害になることは言ってはならない。

 

第18条 不断人の噂いふへからす人の善事ハ取上悪は捨へし人の悔も大形ハいふへからす深くいヘハ悪口かましく可成

 

いつも、他人の噂を言ってはならない。他人の良いことは取り上げ、悪いことは捨てるべきだ。また、他人が悔やんでいることも大げさに言ってはいけない。深い話をすると、悪口を言っているようになる。

 

第19条 主人より我にあたることく又其下々へもうつすへし忝事あらは其ことくうつすへし無理なる事あらハ下々も迷惑に可存と心得尤の事也古人のいはく我身つめつて人の痛さを知れとなり

 

あるじから自分にするように、家来にも行なうこと。ありがたいこともその通りにする。無理なことがあれば、家来も迷惑であると心得ること。昔の人が我が身をつねって他人の痛さを知れといったのは、このことである。

 

第20条 家来夫々に惰をかけ目を明き召仕事主人の利口にあらすや主人情深きに下人邪の奉公ふりあらハ天罰のかれすたちまち悪出来て命を失ふ事眼前なり

 

家来のそれぞれに情をかけ、道理をわきまえて使うことは、利口なあるじということだろう。あるじが情け深いのに下のものが邪悪な奉公ぶりでは、天罰を逃れられずに、たちまち悪事が出現して、すぐに命を失うことになる。

 

第21条 主人たる者不断内の気をかね諸事恥敷と思ハハ悪事もなく腹も立へからすまして一人二人召仕者ハ心得有

へし 

あるじである者は、普段から内のことに気を配り、諸事控えめに振る舞えば、悪い事も起きず、腹を立てることも ない。まして一人、二人を召し使う者はこのように心得るべきだ。

 

第22条 主人目の明さるは必禍多かるへし奉公よくする者を不見付当座気に入かほ成を悦ひ禄をとらせ懇ふりする

ゆへに能奉公人気をかへ暇をとるもの也主人の難にあらすや当座気に入かほの者ハまいすたるへし

 

あるじにものを見る眼がないということは、必ず禍が多い。よく奉公する者に気付かず、その場しのぎのお気に入 り者に悦んで給料を払い、親しくするので、よい奉公人は気持ちを変え、転職してしまう。あるじが悪いからであ

る。当座の気に入り者とは下劣な者である。

  

第23条 悪敷主人ハ目にておとし気色しておぢらる、やうにうハつらにてする人ハおづへからす心もおくれ未練た

るへし第一の草臥もの也善主人ハむさと人をしからす気に苦労なくして物いはすともくらひ詰に召仕ゆへ下人共由

断ならすせハせハといふ主人ハ毎の事のやうに下人覚へ不聞入ものなり

 

悪いあるじは、目でおどし、顔つきで怖れさすように上面でする。そのような人間には怖れたりはしない。そうな れば心もひるみ未練が残る。第一のくたびれものである。善いあるじはやたらに人を叱らず気苦労なく物を言わなくても自然に仕事をするよう召し使うので家来たちは油断できない。せかせかと言うあるじはいつもの事のように家来たちは思い、聞き入れないものである。

 

第24条 身に高慢する人ハ先近し 

高慢な人は先がない。

  

第25条 言葉多くて品すくなしと古人いひ伝り誠に眼前なり 

言葉多い人は品性がないと古人が言う通りだ。

  

第26条 女人若衆へハ深く遠慮専一なり老若共に嗜へし脇目よ見苦敷ものなり 

女性や若い人には遠慮が第一である。老若がともに嗜むべきことである。脇から見ると見苦しいものである。

  

[主君江奉公之心持之事] 

主君へ奉公する時の心持のこと

 

第27条 不断御用に達へき覚悟心かけ由断不可有事 

普段から御用をやりとげる覚悟を心がけ、油断しないこと。

  

第28条 主人之御前に出る共其時に応したる御挨拶見合肝要なり主人御顔持悪敷ハもし我身に誤りや有と身をかえ

り見て慎へし主人余の人に機嫌悪敷事も有へし夫を我身の上に引請ふせうなるつらをする事ひが事なり常々主人日

見せよく情らしくハ猶以身の慎肝要なり能キ次には悪敷事有へしと心得尤なりかやうに嗜ハ一代主人の気に不違なり

 

あるじの前に出るときにはその時に応じた挨拶が肝要である。あるじの顔色は悪いときは、もしや自分に誤りがあ るのではないかと省みて、慎むべきだが、あるじが他の人に対し機嫌が悪いこともあるので、それを自分のせいと

考え不快な顔をするのは間違いである。常々、あるじがよく見えて、情けあるような時は、なお身を慎むのが肝要

である。良いことの次には悪いことがあるだろうと心得るべきで、このように嗜めばあるじの気分を損なわない。

 

 

第29条 古人ノ曰先忠の忠ハ不忠当忠の忠ハ本忠なり今日も新参今日も新参如斯二六時中心に慎ハ悪事不可出也

古人が言うように、先忠の忠は不忠で、当忠の忠は本忠である。毎日が新参と思い、二六時中慎んでいれば悪事は でないものである。

 

第30条 主人江奉公之事身をへり下り欲を捨て御為第一に可致人により心持あるへし 

あるじに奉公するにはへりくだり、欲望を捨て、あるじの為、第一に致すべし。人によって心の持ち方があるべき である。

 

 

[家老の心持之事]

家老の心の持ち方のこと

 

第31条 身の欲に離れ婬乱を止メ気随を去り我仕度事を止メいやなる事を可用主人之仕置を守り末つかたの者へ裁定木を当ておとなしく心を持へし人ののだち侯様に仕り人のわざハひおこる共異見をくわへあつかふ事尤也主人の気に違ひたる人ありとも下二而理非を正し無如在においては身に咎をうけても人そこねさるやうに心得へし

 

欲を離れ、婬乱を止め、気ままな態度を止め、自分のやりたいことを止め、嫌なことでもすること。あるじの決まりを守り、規範を示し、年長者らしい心を持つこと。人が伸びるように図り、他人に災いが起きても意見をして取り扱うことが大事である。あるじが気に入らない人があっても、下のほうで理非を正して、手落ちが無いときには自分がとがめられても、人に傷がつかないように心得るべきだ。

 

第32条 依怙息贔屓不可有親兄弟一門成共善はよきにし悪敷ハあしきにしらする事第一の本意なりかならす主人ハ下々迄常に近付されハこまか成事ハ不知家老の役にあらすや十か七つ八つハ家老の口を真にする事多し然にゑこひいき有ハくらやみたるへし第一我身の行ひをよくすれハ人も能手に付なり我あり度儘に有てハ一つとして不可調主人も頓而見かきるへし

 

えこひいきをしてはならない。親や兄弟の一門であっても、善は善、悪は悪とすることが第一である。あるじは、ふだんは常に下々までは近付かないので、細かなことは知らず、家老の役目ではないだろうか。

十のうち七、八は家老のいうことを真にすることが多い。だから、えこひいきがあれば、くらやみとなるだろう。第一は自分の行い良くすれば、他人もそうなる。自分がしたいままにするのでは一つとしてうまくいかない。あるじも、やがて見限るだろう。

 

第33条 朝寝すへからす家老朝寝好むならは其下々共に朝の役に立間鋪なり

 

朝寝してはならない。家老が朝寝を好むと、下の者たちも朝の役目に立たなくなる。

 

 

第34条 身に応せさるよせいひか事なり但武具刀脇指鑓着類一通りハ可嗜其外ハ身代に応すへし

 

身分不相応のみえは、張ってはいけない。ただし武具、刀、脇差、槍、服装類、一通りは嗜むべきだ。その他は財産に応じて生活すべきだ。

  

第35条 世間を勤る事能程可然切々他所へ出ハ主人江之非儀たるへし主人御用の時度々留守と言事不可然主人も度かさなれハ心可替若不慮の事出来る時用に不立ハ第一之不忠節也必天理に背ゆへ悪事出来す其てんに不合也可慎

 

世間との付き合いはほどほどにすべきだ。ちょくちょく他所へ出かけるのはあるじへの礼を欠くことになる。あるじから御用のある時、度々留守ということではいけない。あるじも心が変わる。もし不慮のできごとがあった時に用に立たないのは第一の不忠節である。必ず天理に背くため、悪事が起きる。その典に合わない。慎むべきである。

 

第36条 人の事悪敷口をきく出入之者ハ必心をゆるすへからす又先江行其家の事を可語当座の間に合する物也と心得心をゆるすまし

他人のことを悪くいう出入りの者には、心を許してはならない。また、行った先でその家のことを語るときには、当座の間に合わしたことを話すものであるからと心得、心を許してはいけない。

  

第37条 家老より下の侍も主人江奉公猶以心かけ第二には家老の心をはかり仕置を耳に聞留家老の気に入様にすへし是主人江之式法なりたとへ気に入とてもうそをつきまひすらしき事をいひ軽薄をつくし気に入へからす本意にあらす正道にて気に入は本意なりたとへハ能者なり共家老と中悪敷ハ家に堪忍成へからす

 

家老よりも下の侍も、主人へ奉公することを心がけ、第二には、家老の心を推しはかり仕置きをよく聞きとめ、家老の気に入るようにするべきだ。これがあるじへの作法である。たとえ、気に入ったとしても嘘をついてへつらい、軽薄をつくし者をきにいってはならない。これは本意ではない、正道で気に入るのが本意である。たとえば能力ある者でも家老と仲の悪い者は家においてはいけない。

 

第38条 新参の者ハ古参の衆によく家の作法を尋其ことく可相守家により作法替事も有へし然れ共善道ハ何方も同意なり身の行ひ正しくしてたたずみ不成時は悪敷家と心得立去へし長居は悪事のもとゐなり

 

新参の者は古参の者に、よく家の作法をたずね、そのように守りなさい。家によっては作法の違うこともある。しかし、よい道はどこでも同じである。身の行いを正しくしてもとどまりにくいときは悪い家だと心得て、立ち去るべきだ。長居は悪事の基である。

 

第39条 古参の者主人をたつとまハ新参の者を引立不知事ハいひ教へ家の作法を守らせ年をかさぬる様にすへし如何に古参たり共我儘を朝暮仕新参の者に異見申とも聞入間数也新参の者悪事多くは古参の者悪人たりと思ふへし古参の者作法第一たるへし家老につつき不断よく可嗜

 

古参の者があるじを尊ぶということは、新参の者を引き立て、知らないことは教え、家の作法を守らせ年を重ねるようにすることである。いかに古参であっても朝暮にわがままを新参のものに意見しても聞き入れられない。新参のものに悪事が多いのは古参の者が悪人だからと思うべきだ。古参の者の作法が第一である。家老に続いてふだんからよく心がけるべきだ。

 

第40条 数年昼夜奉公をつくしても気も不附主人ならは譜代なり共隙を可取うつらうつらと暮し候事詮なし情深く理非正しくハ肩をすそにむすひても譜代の主人といひ情に思ひかへとどまるへし

 

数年、昼夜奉公をつくしても気のつかないあるじであれば、譜代であっても暇をとるべきだ。うつらうつらと暮らすのは意味がない。情け深く理非正しいあるじであれば、肩を裾に結んでも、譜代の主人であるからと情をもって思い直し、とどまるべきだ。

  

第41条 よき主人善き家老よき侍といふハ十に一つ二つ三つ悪敷ハよきなり悪きをゆるすとてひけ有人か一心の不叶か口をたたき人の中言或は手の悪敷ぬす人同前の事たらは以の外可成免しても不苦ハ立居の不調法物言こと葉のひくき事なと言ハ若しかるましきか此外ハ不可免

 

よい主人、よい家老、よい侍というのは、十に一つ、二つ、三つ悪いところがあってもよい。悪いのを許すと言っても高慢な人間が自分の心に合わないとして、かげ口をいったり、つげ口をいったり、手の悪い盗人同様のことをするものは、もってのほかである。許せるのは、立居振舞の不調法なもの、物を言う言葉の能力の低いことなど、このほかは許すべきではない。

 

第42条 婬乱なる人ハ風上にも不可置事 

婬乱な人は風上にもおいてはいけない

  

第43条 親たる人に不孝行ハ人外也如何行末あしかるへし主親ハ深くうやまふべし 

親に不孝行は人ではない。行く末はどんなにか悪いことか。主親は深く敬うべきだ。

 

第44条 大身小身侍によらす理非を改へし理に二つハ有へからす 

大身であれ小身であれ、侍は理非を改めるべきだ。理に二つはない。

 

第45条 人間に生れ臆病なる者ハ有間敷也常に心かけなく無嗜なる人たるへし子細は詰腹を不切者ハなし然ハ臆病なる人ハかいもく無嗜ゆへ成へし用心ハ常に嗜深く先祖の恥をかなしみ命をおしまさる事是可為本意

 

人間として生れたら臆病者ではいけない。常に心がけがなく、たしなみのない人だということだ。細かくいえば詰め腹を切らない者はいない。臆病な人は、まったくたしなみがないからだ。用心は常にたしなみ深く、先祖の恥を悲しみ、命を惜しまないことが本意だ。

 

第46条 我しらさる諸芸ハ嫌ふ者多し我得たる芸能ハもてはやすなり無理なる沙汰也面々の数寄数寄たるへし 

自分の知らない芸を嫌う者が多い。自分の得意な芸能はもてはやす。無理な話だ。それぞれの好きずきである。

 

第47条 慇懃にするハ徳意多し慮外する人ハ損多かるへし

慇懃な人は徳が多い。ぶしつけな人は損が多い。

 

第48条 大名大身小身侍下々迄諸事に付早しわるし大事なく遅しわるし猶わるし心得へし

大名大身小身侍下々まで物事の決定が早くて悪いのは大事ではないが、決定が遅くて悪いのは、なおその上、悪いと、心得るべきだ。

 

第49条 惣而人の落目を救ふ事尤なり 

すべて、落ち目の人を救うことは、もっともなことだ。

 

第50条 我か贔屓成人言イ事する時善悪のひはんに及ふ時ひいきなる人を大にほめあい手を悪敷不可申あい手ひけをとりたると思ひ打はたす也ひいき成人を思ハハ両方難も不付様にて言あひてきつくひけ取たらハ不及是非事也

 

自分がひいきしている人が言い争いをする時、善悪の批判をする時、ひいきしている人をほめ、相手を悪くいうべからず。相手は負けたと思い、打ちはたすからである。ひいきしている人を思うなら、両方難をつけないように言い、結局負けるならば、これはしかたがない。

 

第51条 少事ハ大事大事ハ少事と心得へし大事の時ハ一門知音中打寄談合するにより大事には不成なり少事ハ大事と言は一言の儀にて打はたす也然ルゆへ少事は大事と可慎

 

小事は大事であり、大事は小事であると心得るべきだ。大事の時は、親戚一門が寄り合って相談するから大事にはならない。小事は大事、というのは、一言で済ませるからである。だから小事は大事と慎むべきである。

 

 

第52条 かりそめに寄合共座敷の衆の縁者親類を思ひ出し咄にも気を付害にならさる事のみ可咄

 

かりそめに寄り集まっても、座敷にいる人々の縁者や親戚のことを思い出して、話題にも気をつけ、害にならない事だけを話すべきだ。

  

第53条 窮屈成所を好み楽成所を嫌ふべし 

窮屈なところを好んで、楽なところを嫌うべきだ。

 

この53条には、理由が書かれていない。含みが多くて解釈は難しい。文字通りとらえると、ネズミや犬の世界になるのだが、仕事の話だろう。窮屈なサラリーマン生活がいやだと言って、自由生活に逃れてはいけない、というくらいに考えておく。

 

 

第54条 我役目ハ武芸也作法勤ハ身の楽をも可致楽とて人嘲事ハ可慎 

自分の役目は武芸である。作法や勤めは体が楽である。楽だからといって、他人を嘲笑うことは慎むべきである。

 

第55条 傍輩衆おとつるる時ハ何様の事あり共逢へきなり心易衆におゐてハ急用候間調可申と断急用可達なり 

友達衆が訪れた場合は、どんなことをしても会うべきである。心易い人たちならば、急用があるので、と断り、急用を済ますべきである。

  

第56条 主人被召候時朝夕給かけ候共箸を置可出何様の急成御用もしれず食給仕廻出る事無忠節たるへし 

主人がお呼びの時は、朝夕食べかけの時でも箸を置いて出勤すべきだ。どんな急ぎの用かも知れず、食べ終わってから出かけるのは忠節のないことである。

  

第57条 毎朝早天に起き先髪を結ひ食を早く給可申事奉公人ハ何様の事にはしり出る事も有へし共嗜也 

毎朝、早く起き、まず髪を結って、食事を早く食べるべきだ。奉公人は、どんな事で走り出ることになるかもしれないから、そのための嗜みである。

 

第58条 夏冬共に不断帯堅くすべし急にはしる時尻をつまけ刀脇指うこかさる程に常々帯堅くむすび付べし常に帯ゆるく尻げたに掛ケ仕付れハ急にはしる時すね腹痛み出る先にて役に不立物也

 

夏冬とも普段から、帯は堅く結ぶべきだ。急に走るとき、尻をはしょり、刀・脇差の動かないように常々帯は固く結び付けるべきだ。常に緩く下の方に締めていると、急に走る時、すねや腹が痛み、出た先で役にたたないものだ。

 

 

第59条 急に走り出る時三尺手拭はなすべからす大小指様有之刀をぬく共鞘落さる様に心得有事なり

 

急に走り出すときに、三尺手ぬぐいを手から離してはいけない。刀類は差し様がある。刀を抜いても鞘を落とさないような心得があるからだ。

 

 

第60条 家来手討にするハひが事也理を以言付仕廻ふ事本意なり又一僕仕ふ者ハ格別なり能分別して仕そこなハざる様肝要なり

 

家来を、手討ちにするのは、心得違いである。わけを言って言いつけるのが本意である。また、召使が一人だけの者は、格別よく分別して、しくじらないようにするのが肝要である。

  

第61条 大酒すべからす無是非座敷にて大酒いたす共深く諸事に可慎人のうへにても酔の紛に言事ありとも互につのらさる内に挨拶して退出すべし

 

大酒を飲むべからず。どうしても座敷で大酒を飲む場合でも、諸事に慎むべきである。寄った勢いで口論するとしても、お互いに論をつのらせる前に挨拶して退出すべきである。

  

第62条 惣別傍輩つき合の時物事を大耳に可聞軽口たてあしくあやまり多かるべし

 

すべて同業との付き合いの時、物事はおおまかに聞くこと。軽口を言うのは悪い。誤りが多いものだ。

  

第63条 侍たる者ハ刀脇指可嗜拵ハ見苦しくともねたば成共よくあハせ可指刃なとひけさびくさりたる大小は其人の心見かぎるものなり

 

侍たるものは、刀脇差に嗜みを持つべきだ。あつらえが見苦しくても、鈍い刃であっても、よく研いで指すべきだ。刃などがくもり、錆び腐った大小は、その人の心持を見限るものである。

 

第64条 冬なり共薄着を好へし厚着を好めばくせになり俄にうす着の時かじける物也不断火にあたりつくへからす但病人老人ハ格別なり

 

冬であっても薄着を好むべし。厚着を好めば癖になり、にわかに薄着になった時、かじかむものである。普段から火にあたらないようにする。ただし、病人と老人は別である。

 

第65条 火事抔に出る共心得有べし火事に斗心を付度々行当る儀もあり子細ハ我家に火を掛切出る事有左様の時思ひ不寄手負死人有之能心を可附

 

火事などで外に出るときにも心得がある。火事に心を取られると、しばしば行詰ることがある。つまり自分の家の火を消さずに出ることがある。そういう時、思いもよらず手負いや死人が出る。よく気をつけるべきだ。

 

第66条 旅立に船渡の乗合馬次にて心を可付泊泊にて火事抔の時出る道筋可見及なり又不用心なる宿と思はは可心掛有明置べし

 

旅行の時、船渡しの乗合や馬次に気をつけるべきだ。宿泊地ごとに火事などの時、逃げる道筋を見届けておくこと。また不用心な宿だと思ったら心がけて行灯を置いておくこと。

 

第67条 不断食物ゑよう好みすべからすくせに成也急成時節難成常に善悪を不嫌麁菜給つくへし急成時の嗜なり

 

普段から食物のぜいたくや好き嫌いをしない。癖になる。急な事態に対応できない。常に善悪を言わず、粗菜を食べるべき。急な時の嗜みである。

 

第68条 不断少の事に薬好み并持薬気附の類何も不可好 

普段、少々の事で薬を好み、持ち薬や気付けの類も好んではいけない。

 

第69条 人に少の物にても必無心不可申心根知るなり可慎

少しのことでも、絶対に他人に無心をしてはいけない。心根が知られてしまうから慎むべきだ。

 

 

第70条 身代恰好に応し不入物も可嗜不及書付也 

収入や格好に応じて不要のものでも嗜むべきだ。書き付けるには及ばないが。

 

第71条 族にて一里二里遠く共川を越へし冬杯川を前に不可置朝川を越せは下々一日かじける物也朝も一里二里夜をこめて可立泊りへ早く可着との事也下々くつろぐ物なり

 

旅行中、一里(約4キロ)・二里遠くても、川を越えること。冬など川を前に置いてはいけない。朝、川を越えれば、下々の者は一日中、凍えるものである。朝も一里二里は日の出前に立つべきで、宿泊地に早く付けば、下々の者もくつろげるからである。

 

第72条 泊りを立時一人跡に残し座敷其外を見廻り可出かならす道具わするる事あり 

宿泊地を立つ時には、一人を後に残して、座敷やその他を見回ってから出ること。必ず道具を忘れていることがある。

 

 

第73条 急旅の時ハ自身もみだき銭を小さいふに弐三百も入腰に可有下々不附時喰物又ハ馬次に可入馬を替時馬牽来る馬士の前にて最前の馬士に早く精出し侯とて乱き銭を能程酒手に致し候へとて遣すへし替りたる馬土精を出す物なりかやうの儀手立に成へし

 

急な旅の時は、自分でも小銭を財布に2、300文入れ、腰に下げるべきだ。下々のお付きがいなくても食べ物や馬を替えるときいるからである。馬引きがきたら、前の馬子に早く精を出してくれたからと小銭を与え酒代にしなさいと言って渡しなさい。替わった馬子は精を出すものだ。このようなことは手管である。

  

第74条 夜中にありく時挑灯我より先へ持すへからす先キ見へぬなり我と同しことく並ひ持すへし先キよく見ゆるものなり

夜中に歩くとき提灯を自分より先に持たすべからず。先が見えない。自分と同じように並び持たせなさい。よく見えるものだ。

 

第75条 不用心成所と聞時ハ夜寝時宵に寝たる所をかへ刀脇指の下緒と下緒を結合せ枕の下にゆひ目を置大小両脇にわけて置急成時大か小か取上れハニ腰共に取道理也尤丸寝之事

 

不用心な所と聞いた時は夜寝るときは、宵に寝た所とは場所を変え、刀と脇差の下緒(さげお)と下緒を結び合わせ、枕の下に結び目を置き、大小を両脇に分けておき、急な時には、大か小をとりあげれば二つとも取れる道理だ。もっとも、着たまま寝ること。

 

 

第76条 不用心なる道中を通る時錐を拵可持色々徳多しきりの拵やう心持有なり 

不用心な道中を通る時、錐(きり)をこしらえ、持つべし。色々徳が多い。錐のこしらえ方に心持がある。

  

第77条 追駈者の時走りなから刀ぬけざる物なり口伝三尺迄ハ不立留はしりなからぬくむさと人に不可伝

 

人を追いかける時、走りながら刀を抜けないものである。口伝だが、三尺(90センチ)までなら走りながら刀を抜くことができるという。他人に教えてはいけない。

 

 

第78条 刀の下緒長きを可附假初にも短を不可附

刀の下緒(さげお)は長いのを付けるべきだ。かりそめにも短いのはいけない。

 

 

第79条 仕者の時前に言葉不可懸刀打付る時一度に詞可掛 

人を仕留めるときには、前に言葉をかけてはいけない。刀を打ち付けるときに一度にことばをかけるべし。

 

 

第80条 旅道具かりそめの物にても可成程手軽くちいさき様に可致泊にて道具取ちらし不可置一所にかた付可置

 

旅道具はかりそめの物でもなるべく手軽に小さくするようにするべきだ。道具をとりちらかしてはいけない。一ヶ所に置き、片付けておくべきだ。

 

第81条 敗軍の時まめ板壱歩腹中へ呑込可然強盗にはがれたり共先にて大便に下ル物也金のみやう有口伝

 

負け戦の時には、まめ板一分を腹の中に飲み込むべし。強盗にはがれたとしても、別の場所で大便に下るものである。金の飲み方には口伝があるものだ。

 

第82条 手負血留なき時ハ我小便を仕かけべし

けがをして、血留めのない時は、自分の小便をかけるべし

 

第83条 常々可心得男ハおとこの遣ひ物也女ハおなこの遣物也かりそめにも女の指出并女の申事不可聞人悪事の基たるへし

  

常々心得るべきは、男は男の役目があり、女は女の役目がある。かりそめにも女の指し出や申すことを聞いてはいけない。悪事の基である。

   

第84条 かりそめに寝ころび候ても脇指はなすへからすむさと不可置 

かりそめに寝転んでも、脇差をはなしてはならない。無造作に置いてはいけない。 

 

第85条 不断善き人としたしむへし悪き人なりともそらすへからす心持可有

ふだんから、善人と親しむべきだ。悪人と言えどもそらすべきではない。心の持ちようがある。

   

第86条 我か人によくするに人悪敷事は有まじ古人歌に、

我よきに人のあしきかあらハこそ人のあしきハ我かあしきなり

如此常々心得肝要なり又歌に

山城の狗の渡りの瓜作りとなりかくなりなるはこころか 

兎角我心次第に能成り度ハ心なり悪敷成度も心なり可慎

 

 

自分が人に善くすれば、人が悪くすることはないだろう。古人の歌に、自分が善くするのに人が悪くすることはないだろう。人が悪くするのは、自分が悪いことである。 

このように常々心得ることが肝要である。また、歌に、山城の狗の渡りの瓜作りとなりかくなりなるはこころかとにかくもわが心次第によくなりたいのは心であり、悪くなるのも心次第である。慎むべし。

   

第87条 学文すき物の本集る共不学人ハいらさる物の本に金銀をついやす道理なり諺に論語読の論語読ずと嘲なり大形見及に心ハ邪にて景気斗の学者して見せ顔なる人多し

 

学問や好学者の本を集めたとしても、学ばない人は、要らない物の本に金銀を費やす道理である。ことわざに論語読みの論語読まずというあざけりがある。おおかたに見ると、心がよこしまで景気ばかりの学者風の顔をしている人が多い。

 

第88条 物を知くさしたる人物しり顔にてそばつら成事を語る 脇より聞けハ笑止なり物を不知人の咄はるかまし也 

物事を中途半端に知る人が、物知り顔にいい加減なことを語る。脇で聞けば、笑止ものである。物を知らない人の話の方がはるかにましである。

  

第89条 人の害に成噺ハ不及申害にならぬ噺にても咄聞る人により咄ても不苦か脇にてむさと不可咄人の偽我偽と成事多し心有人ハ知たる事も不知やうにもてなし嗜む是以はつかしき心根成へし

  

他人の害にある話は言うまでもない。害にならない話でも、話を聞く人によっては話してもいいが、脇にいて簡単に話してはいけない。他人の偽りは、自分の偽りとなる事が多い。心ある人は、知ったことも、知らないことのようにふるまう。これは、ひかえめにするという心根である。

  

第90条 無理を言ぜうのこハき人気の乱成人酒に酔ふ人には出合へからす但出合ハて不叶事あらハ詞やはらかにあらそふ事なかれ能程にして立去るへし

 

無理を言うような強情な人、気の乱れる人、酒に酔うような人に出会ってはいけない。ただし出会わなければならない事があれば、言葉柔らかく、争わないようにして程ほどに立ち去るべきだ。

 

第91条 何事によらす理つよに物事いふ間数なり理のかうしたるハ非の一倍と言たとへハ人のあつかふ時よき時分を不聞入ハあつかふ人も手をうしなひ立腹する也合点すべき所をこかし手持あしく石車に乗たることくにて止かたし分別肝要なり

 

何事でも理詰めで物を言ってはいけない。理の強いのは非の倍になるという喩えは、人を扱う時、程ほどにしておかないと扱う人も手立てがなく立腹するものである。納得する機会をのがし、調子に乗り、しくじることになる。分別が肝要である。

 

第92条 朝夕を給る時腹を不可立百姓の昼夜作り立米給人江奉る我命を続くる米に向ひ怒る心を天道みのがし有間敷深く可慎

 

朝、夕の食事のときに腹を立ててはいけない。百姓が昼夜作ってくれる米だから、わが命を続けさせてくれる米に向かって、怒る心を天道が見逃すことはない。深く慎むべきだ。

 

第93条 我女房に無情あたる者あり大に道の違たる事也男を頼み共に乞食非人をする共附添事深き間也夫を不知常々中を悪ふして物事打解ざるハ非本意なり不便を加へ中よくすべき事なり根本ハ他人の寄合夫婦と成事過去よりの約束成べしそこそこにする人ハ頼母敷なしと嘲可多

 

自分の女房に情けなくあたる物がある。大いに道が違っていることである。男を頼みにして、共に乞食や非人をするとしても付き添うほどの深い間柄である。それを知らずに常に仲が悪く打ちとけないのは、本意ではない。不憫を加え仲良くすべきものである。根本は他人同志が寄り合って夫婦となることが過去からの約束である。そこそこにする人はたのもしげがないとあざけられることが多い。

 

第94条 主人江詫言申上る共主人の機嫌を見及可申上一応二応にて免されさる事も可有也いかに家老たり共見合重て折を見及可申上一旦にむりやりに申叶ハぬと声高に成申事非義なり還て科人ハ脇になり主人立腹して可免者も不免結句誓言を御立候か曲事に被成候事度々に及ひ扨家老も申掛不首尾にする上ハとて身代をやふり立退事もありかた口なる人の仕形成へし

 

主人へわびるといっても主人の機嫌を見て言うべきだ。一度や二度では許されないこともあるだろう。家老だとしても様子をみて重ねて折りを見ていうべきだ。一度にむりやり言ってもだめだと声高に言うことはいけない。かえって罪のある人のことは脇におかれて、主人は立腹して許すべきものも許されず、結局、誓言を立てるとか処分されることがたびたびあると、家老も「申し掛け、不首尾にする上は」といって身代を投げうち立ち退くこともある。一方的な人のやり方だ。

 

第95条 家老たる人ハ傍輩の中に能者有て主人の重宝になる人たり共人の聞前にて取合せ不可申必人前の取合せの事ハ心もある主人ハ不聞入子細ハ心附の有共取合せ申たる家老の心附に成へし主人の心得には難成能家老は潜によき者に御心附も可有と可申上心附に逢たる人家老に尋れ共不存御心附たる事と感し申事可為家老の本意たり

 

家老たるべき人は仲間の中によい者がいて主人のためになる人がいたとしても、人の聞いている前でとりなしをしてはならない。必ず人前のとりなしのことは心ある主人は聞き入れない。なぜなら、その者をひきたてるのは家老の手柄になり、主人の裁量にはなりがたい。よい家老はひそかによい人に心当たりがあると申し上げるべきで、祝儀にあった人が家老にたずねても自分は知らないがめでたいことであると言うのが、家老としての本意である。

 

第96条 下として上を斗ふ事有間敷と世間にいふ一通りハ尤なり乍去心もあるよき主人ハ左様には不思主人のしらぬ事に為に成事多かるべし左様の時ハひそかに聞届可申上是以悪敷申さは下として上江教るなんどど取沙汰可有か主人悪敷心得立腹ひか事なり惣して主人を下よりあなとる事ハなき物也自然にあなとる事あらハ主人のうつけたる所を見付あなどるへしよき主人ならハあなどり度思ふ共成間数也兎角あなとらるるハ主人の覚悟なきよりおこる成へし

 

下は上と争ってはいけないと世間でいうことはその通りである。しかし、心あるよい主人はそう思わない。主人の知らないことでもためになることが多い。そういう時、ひそかに聞かせて申し上げるべきである。これをもって悪く言えば下が上に教えるとはなんだと、取りざたするのを聞き、主人が悪くとって立腹することは間違っている。本来、主人を下の者が侮ることはないものである。もし、侮る事があれば、主人の馬鹿なところを見つけて侮るものだ。よい主人ならば、侮りたいと思ってもできないものである。とかく侮られるのは主人の覚悟がないからおこるのである。

  

第97条 家来の悪敷事を聞共家老を呼ひひそかに異見を加へさせ作法直させ可然何事も聞ぬふりにて居る事肝要なりなま心得の主人理発だてにて不入吟味すれハ夫々の科におこなハされハ不成家のさだちたるべし大それたる科の外ハきかぬにしかし

 

家来の悪いことを聞いても家老を呼んで密かに意見を言って作法を直させる。何事も聞かないふりでいるのが肝要である。なま心得の主人が利発そうにいらざる吟味すれば、それぞれの罪を処分しなければならなくなり、家の騒動になる。大それた罪の外はきかない方がいい。

 

第98条 言事など、いふハ外様付合にてハ稀也不断心安き内に度々有之互に打とけ過言ぞこないもあり又慮外もあるべし能可慎

 

言い争いなどというのは外様のつきあいではあまりない。ふだんから心安いうちに互いにうちとけ過ぎて、言い損なうことも無礼なこともあるからよく慎むべきである。

 

 

第99条 余り人にたりふそく深く言べからす

 

人に対して足り不足を余り言ってはならない。

 

 

第100条 人之芸能又ハ諸道具抔こなすべからす面々数寄数寄成へし

他人の好む芸能や小道具についてはけなしてはいけない。それぞれすきずきである。

 

第101条 盤の上の慰に助言いふべからす能可慎

盤上の遊戯に助言を言ってはならない。慎むべきである。

  

第102条 かりそめにも誓言立へからす

かりそめのこととしても、誓言を立ててはいけない。

 

第103条 女若衆の中立すべからす并奉公人の口入請に不可立 

女や若衆の仲介をしてはいけない。奉公人の口入れや身元保証人に立ってはいけない。

 

第104条 惣而にがざれ深ざれすへからす向の人の心不浮時ハ必無挨拶成へし結句返答悪敷とて腹を立る是言事の基成へし

すべて、相手を侮った冗談やしつこい戯れをしてはいけない。向こうの人の心が浮かない時は挨拶がないものである。結局、返事が悪いといって腹を立てることになる。これは言葉を語る上の基本である。

 

第105条 少の物も人の物ハかるましきなり仮令かり侯とも追付戻すへし久々留置打忘必失ふ事あるへし近頃不念成儀なり

少しでも他人の物を借りてはいけない。たとえ借りてもすぐ戻すべきである。長く借りておくと忘れて失くすことがある。近頃、注意のたりないことである。

 

 

第106条 人に物をかし候とてさいさい取返しに人やる事以の外なりかさぬにはおとりたる分別なり

他人に物を貸したといって、何度も取り返しに人をやるのは、もってのほかである。貸さないことより劣る行為である。

 

 

第107条 人の盃さし候時のむましきと言へからす必盃の口論数度有事なり人と人の盃口論あらハ差出あいを呑挨拶肝要なり

他人から盃を差し出されたら、飲まないと言ってはいけない。必ず、盃をめぐる口論になる。人と人との間で口論があるなら、差し出された盃を飲んで挨拶するのが大事である。

 

第108条 人の物の本借り候共追付返すへし仮令留置るとも可入念鼠に喰れ候へば近頃不念成事恥辱たるへし

他人から本を借りたらすぐ返すべきだ。たとえ留め置くとしても、念を入れ、鼠に食われたりすれば、不注意であることで、恥辱である。

 

第109条 人の愁ハかなしむへし又よき事ハ悦へし愁もかなします悦も不悦ハ不可為本意

人の愁事には悲しむべきだ。またよい事は悦ぶべきだ。愁事にも悲しまず、悦事にも悦ばないのは本意ではない。

 

第110条 人の心をも不見届頼もしだてすへからす必命の禍たるへし

人の心をも見届けず、頼もしく思わせてはならない。必ず命の禍となる。

 

第111条 仮初にもむさと仕たる人のつれに成へからす人の悪事を身に掛る事必可多

かりそめにも、無頓着な人の連れとなってはならない。人の悪事にかかわることが多い。

 

第112条 人のあつかひ事同詫言に掛るましき事なり首尾調ハよし不調時は結句身のひしに成事数度あり是非無了簡頼まるる時ハ大かたに言能時分を考へ可立退うか退うかと掛り居て及難儀事暦然なり

 

人の仲裁事やわび言に関わってはならない。首尾がよければよいが、そうでないと結局自分の災難となることがたびたびある。了見していないことを頼まれるときは適当に言っておき、時分を考え、立退くべきだ。うかうかと関わりあうと難儀になることは明らかである。

 

第113条 人より構の奉公人不可置若置掛り構ある時ハ早速隙出すへし首尾により詫を入帰参する事も可有

人から追放された奉公人を置いてはいけない。もし置いてしまい苦情があった時は早速、暇を出すべきだ。首尾によっては、詫びを入れて帰参することもある。

 

第114条 他へ奉公人大かたならハ不可構若構ハて不叶とも向の一門か知音衆へ談合のことく和かに可頼理運に不可言向より構の断あらハ品により可免つよく構ふ程ならハ我召仕時情をかけ堪忍成様にいたしたるかよしならぬ様にしていよといふハ無理なり共上構事無理の上の無理成へし堪忍いたしよき様にして情をかけ召仕に無理に立さらバ吟味をとげ成敗より外ハ無他

 

他家へ奉公するものは、できるだけ関わりをもつべきではない。もし関わらなければならないなら、向うの一門か知り合いへ談合のように穏やかに頼むべきだ。理屈を言うべからず。向うから構わないと言われるなら品によって許すべきである。しいて世話をするのなら、自分が召し使う時に情をかけ、辛抱するのがいい。我慢できないようにして居よ、というは無理である。その上、構うことは無理の上の無理である。こちらが辛抱してよいように情をかけ召し使うのに、無理に立ち去るならば成敗するより外はない。

 

 

第115条 いか程あしき者共とも其身の立身するにおゐてハ外聞よき様にして隙可出侍ハ互事なれハ能仕立可遣以来のたりに成事及度々

 

いかほど悪いものでも立身したときには、外聞を良くして気の緩みが出るものである。侍は互いのことであるからほどほどに付き合うべきである。あとあと頼りになることがあるものだ。

 

第116条 侍は後生心有へきなり必仏になり度との事にあらす心のやハらぎのため成へし

侍は、後生のことを祈るべきである。必ず仏になりたいということではない。心の安らぎのためだ。

 

第117条 侍ハ大小によらす我のなき人ハなたの首のおれたるかことし但我を立るとて愚痴なる人理もなき事に我を立る是本意にあらす正道にて我を立る人可為本意

侍は、位によらず我のない人は、ナタの首が折れたようなものだ。但し、我を立てるといっても、愚痴っぽい人が、理もないことに我を立てるのは本意ではない。正道で我を立てるのが本意である。

 

第118条 人の隠密にせよといふ事他言有べからす尤主人のひそかに御意の趣ゆめゆめもらすへからす深く可慎

人が隠密にせよ、ということは他言してはならない。まして主人が密かに御意のことはゆめゆめ漏らしてはいけない。深く慎むべきだ。

 

第119条 人の言事を早合点すべからす殊に人の咄の先折へからす

人の言うことを早合点してはならない。ことに人の話を折ってはいけない。

  

第120条 物さハがしき時可乗馬ハ両の耳へよき程にして布の切レ水にても湯にてもひたししほり両耳に押入可乗馬不驚もの也

物騒がしい時、乗る馬には両方の耳へ、適当な程度にして水か湯かでも浸して絞ってから押し込み、乗馬すべきである。馬が驚かない。

 

第121条 大事の聞書ハ文字ふとく可書年寄て重宝なり若キ内ハ細字にても読なれ共年よりてハ不見故詮なき事なり

大事な聞き書きは文字を太く書くべし。年をとってから重宝する。若いうちは細い字でも読めるが、年をとると見えなくなる。どうしようもないことだ。

 

第122条 若き内ハ諸芸何にても習ふへし捨ハ可安盗人の仕様をならへハぬすまれぬ用心の為に成へし

若いうちは色々な芸を習うべきだ。捨てるのは簡単である。盗人のやりかたを習えば、盗まれない用心のためになる。

 

高虎さん、例が悪いのではないだろうか。それとも盗人修業もしていたのかな。得意の城造りを例にした方が高尚となったような気がする。事実、城攻めの達人だから城造りの達人になったわけだ。

 

 

第123条 諸芸習ふとも一旦にすべからす自然に不絶すへし一度ハ仕覚へし必芸珍敷思ひ一たんに習ふ共捨る事可早いつも不絶すれバ上手に成もとひ可成

 

諸芸を習うにしても一時にするべきではない。自然にして、やめないようにすべきである。一度は習って覚えるべし。必ず、芸を珍しく思い、一時に習うと捨てるのも早い。いつも絶えないようにするのが上手になる基である。

  

第124条 物事急成ハ後悔多しねれたる思安に尤の事後悔有へからす

物事を急ぐのは後悔が多い。練れた思案に後悔があることはない。

 

第125条 人をだます事なかれ真の時無承引仮初のされ事成とも大事の節も筈にあふ間敷也是深く可慎

人はだましてはいけない。真実のときに承諾が得られない。仮初のざれ事であっても大事な時に役に立たない。深く慎むべし。

 

第126条 惣両人をあなどるへからす一寸の虫にも五分の魂有といふいかやうの知者をもしらすふかくを取事多し第一人を大小によらす見下すへからす

 

人をあなどってはならない。一寸の虫にも五分の魂があるという。どんな知者であるかわからないので不覚をとることがある。第一には人を大小によって見下すべきでない。

 

第127条 徳意斗を好むもあしく損する道も可有むさと損を好むハうつけ成へし徳する道あらハ徳にましたる事あらしさあれハとてしハき斗にて世は不立損すへき道にて損をいとふへからす折品によるへし

 

得なものばかりを好んでも損をすることもある。わけもなく損を好むのは馬鹿者である。得する運があれば、得になる方をすべきだ。そうはいってもけちばかりでは世の中はなりたたない。損する道で損をいとってはならない。その時による。

 

第128条 常に身不省を堪忍すへしされ共物によるへし一篇に心得てもあしかるへし

常に、身の不省をがまんすべきだ。されども、物にもよる。そればかり心得てもよくないだろう。

 

第129条 人よりの異見ハ悦て可聞よく思ハねば不可言我か人に異見を言心さし可成かまハさる人にハ異見言へからすさあれハ深く敬ひ用る事可為本意異見不用ハ二度いふへからさるものなり

 

人の意見は、喜んで聞くべし。よく思わないなら言うべからず。自分が人に意見する気持ちである。構わない人には意見を言うべきではない。とはいっても意見を深くうやまい用いることは本意である。意見を用いない時は、二度言うものではない。

 

 

第130条 人に物を言共繰返し繰返しくとくといふへからす聞にくきものなり

人に物を言うのに繰返し繰返しくどくど言わないこと。聞き苦しいものである。

 

第131条 人前の咄に我手前をならぬとて必悔事いふへからすたりに不可成結句嘲に逢事多かるへし其身のふかひせうハ不言人の知たる様に聞にくし心ある人ハ人より悔とも能程に返答してよの咄に可直

 

人前で自分の暮らしが良くないと愚痴を言ってはいけない。何の足しにもならず、結局あざけりにあうことが多い。自分に甲斐性がないとは言わないのだから、聞き苦しい。心ある人は、他人から愚痴を聞いても、程よく返事して、他の話にもっていくべきである。

 

第132条 人の手前の不成を余り悔へからす深く悔程の中ならハ一廉合力をして可侮ロにての悔ハ役に不立結句手前不成人の不戒なると名を立ぬ斗なれハ害を付るに似たり 

人は暮らし向きがよくないのを悔いてはいけない。深く悔いるほどならば、いっそのこと合力(乞食)でもしてから悔いるべきだ。口だけの悔いは役に立たず、結局、何人の役に立たず害になることである。

 

 

第133条 人に余り悪人ハなきもの也かゐもく還らざる人と言人も稀成へし人には添て見よ馬には乗て見よと言伝へたり

人と言うのは余り悪人はいないものである。どうにもならない人というのは稀である。「人には添うて見よ、馬には乗ってみよ」という言い伝えもある。

 

第134条 盗人に逢共大方に吟味いたすへし結句由断者と嘲を請る事有へし盗人知れたり共せむへからす子細若人の家来を同類に指事あり大かたにして成敗可然人の家来を同類といハせ付届いらさる事なり兎角盗まれ物捨てると覚悟して強く吟味すへからす慾に離るへし

 

盗人にあっても、適当に調べるべきだ。結局は、「油断者」と嘲りをうけることがある。犯人がわかってもあまり責めてはならない。なぜなら他人の家来が仲間だったということもある。適当に処分すればいい。他人の家来が仲間だったりすると届け出なければならず、要らざることである。ともかく、盗まれた物は捨てた物と覚悟して、強く吟味しないことである。

 

第135条 屋焼人殺徒党を立る歟公儀に対したひそれたる科におゐてハ強く責メ同類を言せ可然訴ねハならぬ事なり

 

放火、人殺し、徒党を組むなど、公儀に対して大それた罪を犯した者は、強く責め共犯者を明かすべきである。訴えなければならない。

 

第136条 死人か不吉成方江見舞共人遣す共少おそきハ不苦可聞合必早立て不首尾成事度々に及ふ心得へし

死人とか不吉な方へ見舞いの人を遣るのは、少し遅くてもいい。聞き合わせてからすべきで、早く立てて不首尾になってしまうことがあるから心得るべきである。

  

第137条 可歓事ハ早見舞ても人を遣ても可然人のうへを悦により後悔有へからす

歓ぶべき事は、早く見舞っても、人を遣ってもいい。人の喜びには後悔はないだろう。

 

第138条 惣別いや成事を可好必いや成事ハ能事多しすきたる事ハ棄へし悪敷事のみなり乍去諸芸抔ハ格別なり嫌ふハ芸の外なり

すべて、嫌なことを好むこと。嫌なことにはいいことが多い。もの好きなことは捨てるべきだ。そういっても芸については別で、嫌うのは芸の外のことだ。

 

第139条 武士と生れ武芸を不嗜うかうかと日を暮す事ひが事なり武芸を能勤てハ身の行もよかるへきかたとへハ出家町人の武芸を好む事ひか事なり出家ハ経念仏をやめ町人ハ商売をやめ候事非本意武士か経念仏商売の事もてあつかふもひか事なり心に物なき人の作法成へし

 

武士に生まれ、武芸を嗜まず、うかうかと毎日を過ごすのは間違いである。武芸もよく勤めれば、自身の行いもよくなる。たとえば、出家僧や町人が武芸を好むのは間違いである。出家僧が念仏をやめ、町人が商売をやめることは本意ではない。武士が念仏を唱えたり、商売をすることも間違いである。心に物のない人の作法である。

 

第140条 身深くかざり薫ひふんふんとするハくせもの成へし女若衆ハ格別なり惣而男たる人はさのみかもふへからす人によく見られ思ハれんとするハ心根いたつらのもとひ成へし

 

身をたくさん飾って香りをぷんぷんとさせるものは、くせものである。女性や若衆は別である。すべて、男たる者は、そのようにかまってはいけない。人によく見られたり思われたりと思う心は、つまらぬことの始まりである。

 

第141条 假初にも人に物毎のかふばり不可成可慎

かりそめにも他人に対して強情を張ってはならない。慎むべきだ。

 

第142条 人と申合する事を出しぬくへからす自然出しぬきても不苦事ハ一戦の砌か取籠者か追かけ者之時ハゆるしも可有其外ハ可慎

 

人と申し合わせていることを出し抜いてはならない。出し抜いてもいいのは、戦いのときか、取り囲まれた者か、追いかける者の場合は許される。その他の場合は慎むべきだ。

 

第143条 我先祖の功を言女房の理発刀脇指の切の威言又ハ何にても安く求め貴く放したるいげん言へからす聞にくき物也身の自慢より発る事なるへし

先祖の功績を言ったり、女房の賢いことや刀剣類の切れ味がいいことや、または安く買い求め、高く売ったということを言ってはいけない。聞きにくいものである。自分の自慢話に発することだ。

 

第144条 千石より上の侍ハ自身の働稀なるへし内の者に情をかけ能者あまた持ハ用に可立第一主人江の御奉公成へし

千石以上の侍は、自分の働きは稀であるから、家来に情をかけよいものをたくさん雇うのは役に立つ。それが第一主人への奉公というものである。

 

第145条 小身成人ハ可成程諸芸を習ひ何の道にても御用に可立と覚悟尤の事自身のはたらき可為眼前

小身である者は、なるべく芸を習って、どんな道でも役に立つと覚悟するのがもっともなことである。自分の働きがすぐできる。

  

第146条 我内にてハ如何様の衣類も不苦出仕抔の時ハ能物を可着世話にけはれを知らぬ侍ハ必出仕に恥をかくと言

自分の家の中ではどんな衣類を着てもいい。出仕する時はいいものを着るべし。世の中の「ケ」と「ハレ」を知らない侍は出仕する時、必ず恥をかく、という。

  

 

第147条 人の脱て置きたる衣類むさと不可見ぷしつけたるへし

他人が脱いで置いた衣類を無造作に見るべきではない。ぶしつけなことだ。

 

第148条 物やぷりすべからす必思ひ当る事度々に及ふ可慎

物を破ってはいけない。必ず、思い当たることが度々に及ぶ。慎むべきだ。

 

第149条 侍の不断可嗜ハ武芸多しといへ共第一兵法たるへし不断大小脇に絶る事なしいらぬ様にても日に幾度も可入ハ刀脇指たるへし然る上ハ能稽古尤の事又曰兵法不知とても用に立もの有と言無理成へきか用人の兵法達したる時ハ一入たるへし昼夜心にかけ嗜へし

 

侍がふだん嗜むべきことは武芸が多いといっても、第一に兵法であるべきである。ふだん大小を脇に忘れず、不要なようでも一日に何度も入用なのは刀、脇差である。その上、よく稽古するのがもっともなことだ。また、兵法なんか知らなくても用に立つものがあるというが、それは無理であろう。兵法に熟達したときには一入(ひとしお)役に立つ。昼夜心にかけ嗜むべきだ。

  

第150条 群衆にてせり合時脇指苦労に成事あり左様の時ハ前へ廻し竪に可指又右の脇に刀のことくも可指かせに不成となり

 

多数が入り乱れて競り合う時に、脇差が邪魔になることがある。そういう時には前に回してたてに指すべきだ。また、右の脇に刀のように指してもよい。じゃまにならなくなる。

 

第151条 主人の御前に人多き時ハ立去朝夕をも終日用をも達し人すくなき時ハ罷出可相詰人の退屈する時ハ猶以精を出し可詰是私の理発なるへし奉公に由断有間敷との嗜成へし

 

主人の前に人が多いときは立ち去り、朝食・夕食や一日の仕事が終わって、人が少ない時には、まかり出て詰めるべきだ。人が退屈するときは、なお一層精を出して詰めるべきだ。これがその人の利発となる。奉公に油断があってはならないという嗜みである。

 

第152条 大事の仕者の時ハ壱尺に少余るはみ出し鍔の脇指にて突へし刃を上にして突くるべし鍔の無ハのりにてすべる事あり但柄ハ巻たる可然必刃を下へすべからすはやき者ハおさゆる事あり必切ル事ハ折によるべし大事の仕者ハ突につきそこなひハなし切には切そこなひ多かるへし

 

人を討ち果たすときには。一尺強のはみ出し鍔(つば)の脇差で突くべし。刃を上にして突くべし。鍔の無いのは血糊ですべることがある。柄は撒いてあるのがよい。必ず刃を下にしてはいけない。動きの早い者は押えることがある。斬ることは、時に応じてである。必ず果たさなければならない場合、「突き」には突きそこないはないが、「斬」には斬りそこないが多い。

 

第153条 大小の柄皮より糸巻よきといふ人あり皮はのりかかりすへるといふ糸巻ハすへらすといふ何れ悪敷といひかたし兎角柄ハいつれにても古くあかじみたるハ血かかりすべらんと思ハるる也昔ハ皮柄斗なれ共数度の用に立来る然上ハ皮柄すべるともきハまるべからすとなり

 

大小の柄(つか)は、皮巻きより糸巻きが良いという人がいる。皮だと血糊がかかると滑るという。糸巻きだと滑らないという。いずれが悪いとは言い難い。いずれにしても古く手あかじみているのは血がかかって滑るだろうと思われる。昔は皮の柄だったが、数回の用にはたった。したがって、皮の柄の方が滑るとも決めかねる。

 

 

第154条 片手うちにする脇指裏の目貫はるか下げて可巻手の内一はいに当るゆへ手廻るべからす目貫上り過たるハ手のうちすくゆへまハる物なり

 

片手討ちにする脇差は、裏の目貫をはるかに下げて巻くべし。手のうちいっぱいに当たるから、手が廻らない。目貫が上がりすぎるのは、手の内がすくから廻るのものである。

 

第155条 大小の柄の長き短きハ面々の数寄数寄可成然共刀は両手を掛柄頭左の手すり払可然脇指ハ猶以短き可然自然の時ぬく時も鍔きりならでハにぎらすさあれハ長くても不入事か第一馬の乗下りに鞍の前徐にかまひ悪し惣而脇指ハ長短共に片手討の物なれハ長柄好むへからす色々子細有事なり

 

大小の柄の長い短いはそれぞれの好き好きである。しかし、刀は両手をかけ、柄頭を左の手ですり払うのがよい。脇差はなお短いのがよい。もしもの時、抜く時も鍔きりでなければ握れない。そうすれば長くても入らざることである。まず、馬の乗り下りに鞍の前輪にひっかかて悪い。すべて脇差は長くても短くても片手討ちのものであるから、長柄は好むべきではない。色々と事情があることである。

  

第156条 大小共に目釘ハ性の能き竹可然自然ハ蘇方の木も可然余りふときハ不可好付り柄ハほうの木然るへし昔より度々用に立来り唯今にほうの木の柄用るこしやくにて樫の木又ハ柚の木杯にてするも有昔も吟味有柄ハほうの木用ひ来る上ハ外の木ハ不可好柄の内くつろぎたるハ切レおとると言伝たり可嫌

 

大小ともに目釘は性のよい竹がいい。蘇方の木もいい。あまり太いのは好んではならない。柄はほうの木がいい。昔から度々用に立つとされ、今でもほうの木の柄を使う。こしゃくではあるが、樫の木や柚子の木を用いることもあるが、昔から柄はほうの木を用い、ほかの木は好んではならない。柄の内側が緩くなれば切れ味が落ちると言い伝えがある。嫌うべし。

 

第157条 仮初に刀持出る共左の手に持たるよりハ右の手に持たるに徳多し口伝

かりそめに刀を持って出るときでも、左手に持つより右手に持つほうが得が多いという伝えがある。

 

 

第158条 刀の少ゆかみたるハ手洗に奇麗なる水を入刀の柄に縄を付切先を下にしさかさまに釣水鏡々見すれハ必直る物なり

刀が少しゆがんだら、手洗いにきれいな水を入れ、刀の柄に縄を付け、切先を下にして、逆さまに釣り、水鏡を見れば、必ず直るものである。

 

第159条 何時も手に逢へきと思ふ時ハ刀の下緒のむすひめより下を二つに分け両方江取帯にむすぶへし鞘を落さぬなり又鞘前へ廻らぬもの也度々切合時鞘前へまハり馬乗に鞘へ乗りたをるる事度々に及ふなり

 

いつも手にあうようにすべきと思う時は、刀の下緒の結び目より下を二つに分け、両方にとり、帯に結ぶべし。鞘を落とさないこと。また、鞘は前には回らないものである。何度も斬りあう時、鞘が前へ回り、馬に乗るときに鞘の上に乗り倒れることが度々ある。

 

第160条 仮初に寝ころぶとも脇指置やう心持ありたとへハ右を下に寝る時ハ身のなりに柄を我面の方江して可置又左を下にして寝る時ハ柄足の方江して我むねの通りに可置心持あり

 

かりそめに寝転ぶ時でも、脇差の置き方には心の持ち方がある。例えば、右を下に寝るときは、柄を足の方にしておくべきだ。また、左を下にして寝るときは、柄を足の方にして自分の胸のあたりに置くという心得が必要だ。

  

第162条 取籠者の時戸細目にてもたてて有をも先明けさせ戸口の左右鑓の石突にても棒にても突破り左右に居所を能知り居る方江いかにも急に入へし切られさるもの也急にはいる時刀にても脇指にても抜持入り其なりに突と心得へし又向に居る時ハ左の手に何にても持はいる事也自然楯にもすへき心なり

 

とりこもり者の時、閉めている戸を細めでもよいから開けさせ、戸口の左右を槍の石突きででも棒ででも突き破り、左右に居所を探ってから居る方へ、いかにも急に押し入るべきだ。そうすれば斬られないものだ。急に飛び込む時、刀や脇差でも抜いて、それなりに突くことと心得るべきだ。また、向こうに敵がいる時には、左手に何でも持って入ることである。これは盾にすべきという考えからである。

 

第163条 人をうしろより抱く事心持有急に強く抱えへからす心得たる者ハ調子を請身を下へしつむ必先江余るものなり若いだく共やハらかに能程に抱へし身を下る共先へ余る事なかれ兼而より下へはづれて下るへしと心得へし両ひぢの通り可然

 

人を後ろから抱く時には心得がある。急に強く抱いてはいけない。心得のある者は体を下へ沈めるので、必ず先の方へつんのめるものである。もし、抱いても柔らかに程ほどに抱くべし。体を沈めても先につんのめることがないよう、あらかじめ下へはずして下るべきと心得るべきだ。両ひじの使い方もそのようである。

 

第164条 先より幽によばハる時我両手をひろげ我両耳の後の方にあて前の方を明け聞けハあらましハ聞ゆるものなり又後より右のことく呼時ハ両手を耳の前に当て聞ハきこゆるものなリ

 

先の方から、かすかに呼ばれた時、自分の両手を広げ、両耳の後ろの方にあて、前の方をあけて聞けば、大体聞こえるものである。また後ろから同じ様に呼ぶ時は両手を耳の前にあてて聞けば聞こえるものである。

 

第165条 闇の夜に先より人の来ると不来とを知事ハ我耳を地につけ聞ハ足音聞ゆる物なり用心のためなり 

闇夜に人が来るのか来ないのか知るためには、自分の耳を地につけて聞けば、足音が聞こえるものである。用心のためである。

  

第166条 大小の鞘黒ぬりにする事急の時又大事の便の時口上覚かたき時小刀の先にて鞘に書記すべきため也又夏の強暑に逢てしむる事なし 

刀の大小の鞘を黒塗りにするのは、急な時や大事な使いの時、口上が覚えにくい時、小刀の先で鞘に書き記するべきためである。また夏の暑さにあっても、湿ることがない。

 

第167条 陣刀脇指の上Y切刃下地をして厚く金をきすべしむくにする事あしし子細ある事なり 

陣刀脇差のはばき切刃は、下地をして厚く金置きすべし。むくにするのはよくない。理由があることだ。

 

第168条 鑓長刀にて人を突時ハ其儘突込と一度に鑓にても長刀にても捨候へハ突れたる者倒るる物なり倒れたる時石突を足にてふまへ候へは起上り兼る物なりうかと突込たる鑓長刀持て居れハたぐり寄事あり鎌鑓十文字ハ格別なリ

 

槍や長刀で、人を突いたときは、そのまま突っ込んで、一度に槍にても長刀にても捨てれば、突れた者を倒れるものである。倒れた時、石突きの部分を足で踏んでしまえば、起き上がることができないものである。突っ込んだ槍や長刀を持ってうかうかとしていると、たぐり寄せられることがある。鎌槍十文字の場合は別である。

 

第169条 喧嘩の時取さゆるとも我贔負成者に取付へからす子細有之事なり 

喧嘩の時、取り持つとしてもひいきの者に取り付いてはいけない。理由があることだ。

 

第170条 急ぐ事有て走るとも能比にはしるへし少し急事遅くとも先にて役に可立息を切はやく走り付共先にていき切レ役に不可立心得肝要なり但道の近きハ格別也

遅刻ギリギリに会社に駆け込む時に応用できる。一生懸命に走らないこと。会社に駆け込む10秒前から、走れば十分だ。もちろん家がすぐそばの場合は、逆効果になる。手口を見抜かれるだけだ。

  

第171条 もし無是非事にて家来手討にするとも一刀打付たらハ二つも三つも続けて討へし一刀にて不可見手廻る歟不切時は必手負事数度多し能可心得 

もし、やむをえず家来を手討ちにする場合には、一刀打ち付けたら二刀目三刀目と続けて討つべきだ。一刀だけでは、斬れてなく手負いになることが多いと心得るべきだ。

 

第172条 なまず尾の刀脇指大切先刃切大刃切すみ寵りの有刀脇指ひたつらの大焼の刀脇差さすへからす 

なまず尾の刀脇差、大切、先刃切、大刃切、隅篭りのある刀脇差、ひたつらの大焼きの刀脇差は差してはいけない。

 

 

第173条 樋刀は曲るとも折るる事なし子細ハきたいのうすき刀脇指に必樋をかくなり 

樋のある刀は曲がっても折れることがない。理由としては、鍛えの少ない刀脇差には樋が欠けている。

 

第174条 一戦の砌馬を乗入候共鑓先揃たる所へ乗込へし必番鑓持たる下人也鑓先揃はさる所ハ面々得道具持侍共也 

戦いのとき、馬を乗り入れる場合は槍先を揃えている所へ突っ込むべきだ。そこは、粗末な槍を持った下人の場所である。槍先が揃わない場所はそれぞれの侍の面々が、いい武具を持っている。

 

第175条 敵川を越し来ルか不来かを知るハ足元を可見目はしをきく事肝要なり 

敵が川を越えてくるか来ないかを知るためには、状況判断をするべし。目端を利かせることが重要だ。

 

第176条 取籠者の時内より切出るといふ節ハ其家の門にても戸口にても我左の方にして身を塀に添鑓ならハ内より出る共少しやり過し突へし刀にても此心にて可切鑓付ても切付ても早ク言葉を掛へし取籠たる門にても戸口にても向に居へからす心得有へし 

 

取り篭り者が中から打って出るという時には、その家にしても門にしても自分の体を左の方に寄せ、塀に沿い、槍ならば内から出るところを少しやり過ごしてから突くべきだ。刀の場合でもこの心持で斬るべし。槍で突いても刀で斬っても、早く言葉を掛けるべきだ。取り篭めた門でも戸口でも正面に立っていてはいけないと心得るべきだ。

  

第177条 馬上にて刀を抜共下緒前に書記ことく結ふへし鞘落へからす馬上にてハ刀鞘に指にくき物なり逆手に取直し我むねに刀のむねを当て指へし左の手には手綱持故也 

馬上で刀を抜くとき、下緒を前にして、結ぶべし。鞘を落とすべからず。馬上では鞘に差しにくいものである。逆手に取り直し、自分の胸に刀の胸を当て、差すべきだ。左の手では手綱を持つからだ。

 

第178条 介錯の時も又首落す時も打付ル所ハ大形にして刀の打留る所に目を可付 

介錯する時も、あるいは首を打ち下ろす時もだが、打ち下ろすところは適当に見て、刀の打ち留める場所の方に目を付けるべきだ。

 

第179条 閙ケ敷時足袋をはくへからす雪踏ハ不申及厚着すへからす胴服ハ可着自然着共どうぶくの上に三尺手拭帯にすへし心持あり 

忙しい時、足袋を履いてはいけない。雪駄は言うまでもない。厚着してはいけない。胴服は着るべし。その時、胴服の上に三尺手ぬぐいを帯にするべき心得がある。

 

第180条 組伏て首落す時ハ切へからす刀にても脇指にても切先を左の手に取りすり落すへし早業に能なり 

組み伏せて、首を落とす時には、斬ってはいけない。刀でも脇差でも、切り先を左手で押さえすり落とすべし。早業によい。

  

第181条 切合ふへきと思ふ時躰(ママ)巻すへからす但くさり手拭ならハむすひめをかけ結ひにかたくむすぶへし 

斬り合う時、体巻きするべからず。ただし鎖手ぬぐいならば、結び目をかけ結びに固く結ぶべきだ。

 

 

第182条 大小共に柄さめ塗たるに徳多し旅立とも越中かけすべからす 

大小ともに柄(つか)をさめ塗りすると得が多い。旅立ちの時も越中がけしてはいけない。

 

第183条 鮫鞘好むへからす

鮫鞘を好んではいけない。

  

第184条 闇の夜に追かけ者打留る其儘声高に名乗へし人に早く聞する為又同士討の用心成へし

闇夜に追いかける者を討ちとめたら、そのまま大声で名乗るべし。人に早く聞かせるため、また同士討ちの用心のためである。

 

要するに、集団で行動する場合、誰を仕留めたかということを即座に全員に知らせなければ、仕事が終わったかどうかわからないということだ。そして、何となくだが同士討ちの話が再三登場するところを見ると、高虎は味方を斬ったことがあるのだろうと推測できる。その場合は、知らんぷりしてしまうのだろう。

  

第185条 闇の夜に追かけ者入組伏たる時卒尓に切へからす上下を能聞中取して突へし此心持肝要なり 

闇夜に追いかける者を組み伏せたときには、直ちに斬ってはいけない。上下をよく確かめ、中取りにして突くべきだ。この心持が肝要である。

 

第186条 急なる追かけ者の近道あり両方ハがけにて細道なり此時三尺手拭我か首にかけ下りたる両端を両手に取引はり其はり合にて足早に行ハ心易く通らるる物なり一つ橋も同前自然三尺手拭無之時ハ刀の下緒にても縄ぎれにても同事なり 

急な追いかけ者で近道があって両方が崖で細道な時には三尺手ぬぐいを自分の首にかけ、下がった両端を両手に取り、引っ張り、その張り合いで早足で走れば通りやすいものだ。一本橋も同様である。三尺手ぬぐいがない時は、刀の下緒でも縄切れでも同じことである。

 

 

第187条 昼夜共に我門を出る時又余所より帰る時も下人を我より先へ出すへし家来も不断心得へし 

昼夜ともに、家の門を出る時、または他所から帰る時も、自分より身分の低い者を帰すべきだ。家来もふだんから心得るべきだ。

  

第188条 人前にて家人に言葉あらく申へからす下々ハ何の弁なくむさと仕たる返答する物なり手により堪忍成かたき事のみ多し 

人前で家人に言葉あらく言ってはいけない。下々の者は何の弁解もできず、いいかげんな返答をするものである。事によっては我慢できないことにもなる。

 

第189条 人の指料の刀脇指見るとも切ハよき歟と不可尋ぶし付ケ成へし又我刀脇指見する共切の事此方よりいふへからす 

人の指料の刀脇差を見て、切れるかなどと尋ねてはいけない。ぶしつけである。また自分の刀脇差を見せる時も、切れ具合をこっちから言ってはいけない。

 

第190条 ためし物なとの時我指料の大小の内をぬき切へからす手の廻る事も有へし時により若不切時ハ無嗜のやうにて面目なき事成へし可慎 

ためし斬りなどの時、自分の大小を使って斬ったりしてはならない。うまく切れないこともある。時として切れなかったりしたら嗜みがないようで面目がないことである。慎むべきである。

 

第191条 他の家来なり共情らしくものいふへし仇には不可成 

他家の家来であっても、情を持って接すべきだ。仇にはならないだろう。

 

第192条 諸事に付争事なかれもし物事あらそひ募らハ言事のもとひたるへし可慎

なにごとも争いごとはいけない。もし争いがつのると、言いがかりのもとになる。慎むべきだ。

 

第193条 人の見廻の時ハ前方にいか程おかしき事有共笑ふべからす尤囁へからす客人の身にして悪敷ものなり 

見回りのとき、前方にどんなにおかしい事があっても笑ってはいけない。また、ささやいてもいけない。客人の身になれば面白くないものである。

 

第194条 座敷にて我か遁れさる者知音衆の噂か咄に出るならハ其儘私のがれす又知音なり余の御咄に被成被下候得と断へしむさとしたる悪口聞間数との嗜なり 

座敷で、自分にかかわりがある者や知り合いの噂話がでたなら、それは自分の関わりがある者であり、また知り合いであるから、外の噺にしてください、と断るべきだ。いいかげんな悪口は聞かない、という嗜みである。

  

第195条 追かけ者馬上より切付ハ鐙のふみ様有之 

追いかけ者が馬上から切りつけるときは、鐙(あぶみ)の踏み方がある。

 

第196条 取籠り者取まき居るともむさと口をきくへからす内より詞被掛間敷との嗜なり 

取囲み者を取り巻いている時は、無駄口をしてはいけない。内側から言葉を掛けることができないとの嗜みである。

 

第197条 昼夜共に屋敷の内にても外にてもわやめく共あら増聞届出へしむさと出へからす 

昼夜ともに屋敷の中で騒ぐものがいれば、よく様子を聞いてから届け出ること。むやみに届け出るのはよくない。

 

第198条 客を呼とも挨拶悪敷衆を不可呼吟味有へき事也 

客を呼ぶときは、挨拶ができないような衆を呼んではいけない。吟味すべきだ。

   

第199条 走り込者有時むさと渡すべからす先隠し置子細をよく聞届其主人江常に念比成衆を頼談合づくにして断を申とも又ハ渡すとも前後の首尾再三念を入埒を可明無首尾にして難をきる事有へし

 

走りこんで逃げて逃げ込む者がある場合は、無造作に引き渡してはいけない。まず隠して、様子をよく聞き、その主人と常に親しい人に相談して、断るとも引き渡すとも、前後の首尾を用心して解決すべきだ。不首尾になり、難を受けることが多い。

  

第200条 武芸の内兵法鑓弓鉄砲馬可嗜兵法にてハ切合時手も負す相手を数度切伏るを上手といふへし鑓にてハ人を数度突伏せ利を得る是上手也弓鉄砲ハよく中りあたやなきを上手といふへし馬ハ達者に片尻かけても落さる様に自由に乗を上手といふへしいかに所作を能学ぶとも兵法にてハ切られ鑓にてハ突れ弓鉄砲ハひたとはづれ馬にてハ引つられ度々落るハ下手也調法にならず能々可嗜

 

武芸としては、兵法のうち、槍、弓、鉄砲、馬を嗜むべきだ。兵法で、斬りあうときけがをしないで切り伏せるのを上手と言う。槍では人を数回突いて仕留めるのを上手という。弓や鉄砲では、よくあたり無駄打ちのないのを上手と言う。馬は、達者に片尻乗りでも落ちないように自由に乗るのを上手と言う。いかに所作を覚えたとしても、兵法では、刀で斬られ、槍で突かれ、弓鉄砲はまったく当たらず、馬に引っ張られ度々落馬するようなのは下手である。使い物にならない。よくよく嗜むべきだ。

 

第201条 物毎に不知事ハ誰人にも可尋問ハ一度の恥不問ハ末代のはぢなるへし 

知らない物事があれば、誰にでも尋ねるべきだ。問うは一度の恥、問わずは末代までの恥となるだろう。

 

第202条 大小の長短ハ人々相応たるへし少も空鞘ふうたい成事すへからす 

刀の大小の長短は、それぞれの人にふさわしくあるべきだ。少しでも空風袋であることはならない。

 

  

第203条 昼夜ともに大勢寄合之時我刀の置所に能気を可付不慮の時取ちかへ間敷ためなり 

昼夜ともに大勢の寄合いの時、自分の刀の置き場所に気をつけるべきだ。不慮の時、取り違えないようにというためである。

  

第204条 物事聞とも根間すへからす 

物事を聞く時に、根本のことを聞いてはいけない。

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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口コミだけで7,000人以上が共感! “家訓のスペシャリスト”の幡谷哲太郎氏が、初めての書籍『世界一簡単な「幸せを招く家訓」のつくり方』を発売。本書は、簡単な家訓づくりのコツを教え、それを通じ、家族はもちろん、子供の成長、さらにはお孫さんの代まで、役立てるコツを指南する。

 

目次 : お母さんの悩みを家訓で解決/ 1分で実践できる素敵な習慣―家訓のある家庭の風景/ 身に着けたい正しい習慣/ 究極の育児は夫婦仲で決まる/ 親の背中が一番の教科書/ おばあちゃんの知恵で楽々子育て/ がんばれお父ちゃん/ 大事なことは先祖に学べ!偉人の家訓の勉強会/ 現代に生きる家訓で育った有名人たち/ 創作家訓の紹介―家訓のある風景

 

 

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書籍名: 世界一簡単な「幸せを招く家訓」のつくり方

著者 : 幡谷哲太郎

発売日: 2015年6月1日

出版社: セルバ出版

価格 : 1,600円+税 

URL  http://www.amazon.co.jp/dp/4863672063 

 

 

 

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コメント: 1
  • #1

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